2022/08/03(水)

お茶を表す語として、大別すると「チャ」と「テー」の2系統があるのだけど、日本語で検索すると“広東から陸路で伝わった「チャ」”と“福建から海路で伝わった「テー」”と説明するサイトが複数出てくる。それが“定説”になっているようだが、ちょっと大雑把すぎるというか、日本語の「チャ」が広東語由来のはずはないので、英語でもいろいろと調べてみる。「テー」の方は一つの系統のようで、福建語から直接またはマレー語経由でオランダ語の"thee"となり(海路)、それが英語の"tea"やフランス語の"thé"などとして西欧や北欧に伝わり、そこからさらに欧州以外の言語にも広まっている。一方「チャ」の方は複雑なようで、例えばマカオを中心とした広東から伝わったポルトガルでは"chá"となっている(元は「チャ」だったが現代の発音では「シャ」)が、陸路ではなく海路。陸路としてはペルシャ語の「チャイ」を経由した大きな系統があり、ヒンディー語やトルコ語、ロシア語でも綴りは違っても大体「チャイ」という発音になっている。ただしこちらは広東からではなく、北方の中国語を元にしているらしい。そして日本語の「チャ」は院政時代の中国の発音を元にしているらしい。勿論、広東ということはなく、当時の首都の発音だろう。韓国語の「チャ」も同様ではないだろうか。なお、現代北京語でも「チャ」と発音している。という訳で「チャ」系統の方は、“官話(北京語や西安語、成都語など)や広東語が、主に陸路を介して伝わった”というのが実際のところなのだろうか。