2024/03/11(月)

ロシア語の"мечта"(起きている時に見る夢)には、複数生格が存在しないので、「たくさんの夢」は"мечтание"(夢を見ること)の複数生格で代用して"много мечтаний"となるらしい。"человек/люди"(人)や"ребёнок/дети"(子供)のように、複数になると違う語を充てる場合があることは知っていたけど、特定の格だけが欠落している語があるとは驚きである。もし"мечта"を規則的に変化させたなら複数生格は"*мечт"になるはずだけど、ネイティブにとっては不自然になるのだろうか。例えば日本語の形容動詞「同じだ」の連体形を用いて「同じな人」というと不自然に聞こえるように。

ロシア語の類例としては、"победить"(勝つ)には現在形1人称単数だけが存在しない、というのがあるとのこと。なので“私は勝つだろう”は"Я одержу победу."(私は勝利を得るだろう)などと表現するらしい。これも他の動詞に倣って"*побежу"のように言ったところで不自然なのだろう。なお、存在しないのは完了体の現在形1人称単数だけなので、“私達は勝つだろう(Мы победим.)”や“私は勝った(Я победил.)”、“私はいつも勝つ(Я всегда побеждаю.)”は問題ないらしい。

日本語の形容動詞「同じだ」の連体形には「同じ」と「同じな」があって、名詞が続く場合は前者を用いて、「の」や「ので」「のに」が続く場合は後者を用いている。特殊な活用と言えるが、前者は語幹をそのまま用いてるとも言えるらしい。形容動詞の「同じだ」は形容詞の「同じ」が転じたものらしいが、連体形が特殊なのはその影響だったりするのだろうか。因みに「同じく」は、形容詞「同じ」の連用形に由来している。

ロイス・マクマスター・ビジョルド「魔術師ペンリックの仮面祭」読了