2006/08/02(水)

ベルゲンはノルウェー第2の都市で、街自体が観光名所であるが、夏場は特にフィヨルド観光の基地として賑わう。という訳で今日は、今回の旅のハイライトとも言うべきフィヨルドツアー~といっても手配したのは割と遅めだったけど(笑) その名も"Norway in a nutshell"というコースを出発前に日本からネット予約。添乗員がいる訳ではなく、ただ旅程に従って列車や船を乗り継ぐだけで、料金の割引もないらしいが、個別に切符を買うより楽で、何より混雑期でも満員で乗り損ねる心配がないのが嬉しい。

まずはベルゲン駅から9時前の列車に乗る。車内のほとんどは観光客らしく、出発前には満席になった。アナウンスはノルウェー語が基本だけど、要所要所では英語でも案内。ベルゲン近郊のフィヨルド沿いに暫く進んだ後は、山岳地帯に入っていく。その山々も氷河の浸食なのか、いずれも険しい。湖岸を走って中間地点のヴォス(Voss)を過ぎて、山中を走ってトンネルを抜け、約2時間で終点のミュルダール(Myrdal)に到着。予定より10分近く遅れていたけれど、さすがに乗り継ぎ列車は接続を待っていた。とはいえそんなに時間がある訳ではないので、写真を撮る間もなくホーム反対側の列車に乗り換える。

ヒョース滝

ここからは私鉄のフロム鉄道(Flåmsbana)で、機関車も客車も「トワイライトエクスプレス」のような濃緑色。800m以上の標高差を20kmで結ぶ登山列車で、ミュルダールからは下りの連続となる。車内放送はノルウェー語、英語、ドイツ語の順番。程なくヒョース滝(Kjosfossen)で5分間の見学停車。ホームの目の前に落差93mの大きな滝が水飛沫を上げていた。列車は再び走り出し、崖に取り付いた急勾配をぐねぐねと下っていると、時折通り過ぎた線路やこれから通る線路も垣間見える。川沿いにさらに下ると、線路はいつしか切り立った崖の谷底となり、約1時間の乗車で終点のフロム(Flåm)へ。

フロム鉄道

フロムは世界最大のソグネフィヨルド(Sognefjord)が枝分かれした、アウランフィヨルド(Aurlandfjord)の先端に面していて、港は当然のことながら険しい崖に囲まれている。駅の近くにも崖が迫っているように見えるが、谷は結構広い。このスケールをコンパカメラで表現するのは難しいかも。港にはどどーんと巨大な船が停泊していて、列車から見た時はあの船に乗って観光するのかと大層驚いたけど、近くで見るとそれは通りすがり(?)の豪華客船「アルカディア」だった。さすがに大きすぎだってば(汗) 定期観光船はその手前に停泊していた中型船で、1時間半後に乗船するコースもあるけれど、今回は3時間後の乗船なのでフロムでゆっくりと過ごすことになる。

まずは駅構内の食堂で昼を済ませてから、フロム鉄道博物館(Flåmsbana Museet)を見学。観光案内所には散策コースのパンフレットがあったので、折角なので一番お手軽なコースを辿ってみることにする。所要40分とあるので、船の時間までには十分余裕がありそうだし。坂道を上りながら振り返ると、だんだんと視界が開けて港全体を見下ろせるようになるが、豪華客船が結構邪魔だったりする(^^; 道沿いにはシャジンやマツムシソウの仲間が咲いている。ナナカマドの実も既に赤く色付いているが、今日はことのほか良い天気で、歩いているとかなり暑く感じる。牧場を通り抜けて別荘の間の坂を下ると、谷底に着く。川と線路に沿って下って暫く歩けば、そこはもうフロム駅前。港に面した公園を散策してから乗船場へ。

フィヨルド

少しで遅れたので側面の椅子になってしまったが、最上階デッキの角だったので、席としてはかなり良い方だろう。フロムの港を後にしてフィヨルドを暫く進み、斜面に色取り取りの家が並ぶアウラン(Aurland)に寄港。解説によると水力発電所があり、オスロの電力はここで賄われているとのこと。これだけの高低差があれば発電量も相当なのだろうね。進み続けると山はさらに険しくなり、樹木も生えない剥き出しの地肌が目立つようになる。遠くの山は霞み、斜面には所々滝も見られる。頭上には青空が広がっているが、船は時折崖の陰に入る。遠くの方では雲が覆っている所もある。

ウンドレダール(Undredal)の集落を過ぎ、屏風のように聳える山の麓で、アウランフィヨルドからネーロイフィヨルド(Nærøyfjord)に入る。分岐点ではソグネフィヨルド本体へと続く水路も見える。この辺りでは山から斜面を掛け下る水は、滝となって一気に海に注いでいる。途中で停泊したスティーヴィー(Styvi)はその昔、ベルゲンから船で運んだオスロへの郵便物の中継点となっていたらしい。さらに進んでカヌーを楽しむ人の群を通り過ぎると、バッカ(Bakka)の集落が見えてくる。解説によると船以外の交通手段はないとのこと。因みに自動アナウンスは、諾・英・独・西・仏・日・韓・露・中の9カ国語なので、同じ場所の解説でも最初と最後ではかなりの時間差がある。

山の中は肌寒くなることがあるかもしれないと、今日はセーターも持参していたのだけど、あまりにも良い天気で、陽射しを遮るものがない甲板は随分と暑い。太陽が雲にでも入ってくれれば少しは涼しくなるのに~と思っていたら、あたりは急に暗くなってあられ混じりの雨が激しく降り出す。慌てて傘を広げたが、横から降り込んでくる雨を完全に防ぐことは出来ない。向こうの方は晴れていてあんなに明るいのにね。これだけ地形が変化に富んでいると、天気も変わり易いのだろうね。程なく雨は止んだけれど、傘をたたんで周りを見渡せば乗客の3分の2が屋根の下に避難していた。

スタルハイム

そうこうしているうちに、船はグドヴァンゲン(Gudvangen)に到着。ここからはバスに乗り継ぐことになるが、バス乗り場には既に長蛇の列。さすがに続行運転のようで、すぐにやって来た2台目に乗車することが出来た。バスはハイデッカーの大型車で、山道の細いヘアピンカーブをひたすら登り続ける。峠にあるのがスタルハイムホテル(Stalheim Hotel)で、ここで25分の休憩となる。ホテルの建物を通って展望デッキに出ると、目の前には切り立った崖と谷底を流れる川の雄大な景色が広がる。船を下りてからも小雨が続いていたので、景色が見えなくなるのではないかと心配していたけれど、空を覆う雲は山よりも高かったので、霧で眺望が邪魔されることはなかった。ノルウェーに来てからあちこちでヤナギランを見掛けていたが、ここが一番近くで見ることが出来た。

ホテルからはなだらかな山道を辿り、湖の畔に出て暫く走って、午後7時前にヴォスの町に到着。山を越えたこのあたりでは、雨が降った形跡が全くなかった。列車の時間まで今暫く余裕があったので、ヴォス教会(Voss Kirke)とヴァングス湖(Vangsvathet)を見に行く。駅に戻った時には後続のバスが何台か到着していたので、列車は既に満席近くなっていた。眠気をこらえながら1時間と少しの乗車でベルゲンに帰還。丸半日の旅程で、宿に戻った時には午後9時近くになっていたけれど、まだまだ明るいのが北欧の夏。途中で雨も降ったけれど、ほとんどが快晴に近い好天で、景色を存分に楽しむことが出来て何よりだった(^o^)