2009/05/02(土)

アイルランドの朝食

宿の朝食は、勿論アイリッシュ・ブレックファーストとミルクティー。アイリッシュと言っても基本的にはイングリッシュとほぼ同じなのだそうだが、ブラック・プディング(血を固めたソーセージ)やハッシュポテトの出現率が高いような気がする。因みに紅茶といえばイギリスというイメージだけれど、一人当たりの紅茶消費量世界一はアイルランドなのだそうな。今日の天気予報は「曇り時々雨」だったはずなのに、窓の外は快晴。この天気が長続きしてくれればいいのだけれど。

9時過ぎに宿を出て、近くにある旅行会社のカウンターで乗車券と乗船券を受け取ってから、フェリー連絡バスに乗車。週末とあってか、2階建てバスは客で一杯になって出発。西に向かって走ること約1時間でロッサヴィール(Rossaveal/Ros an Mhíl)に到着してから、フェリーに乗り換える。こちらもほぼ満席で出航し、アラン諸島(Aran Islands/Oileáin Árann)に向かう。ゴールウェイ湾(Galway Bay/Loch Lurgan)に浮かぶ島々は、特産のセーターが知られている。石灰岩質の島は土壌が薄く、石を砕いて海藻と混ぜて土とし、畑の周りに石を積んで風除けとしている~という紹介番組をテレビで観たのが、もう20年も前のことである。遂にその島を訪れる日が来たんだな~って、なんだか島の方が厚い雲に覆われて暗くなっているような、心なしか強い雨も降っているような。さっきまであれだけ天気が良かったのに、なんてこったい。まぁ、雨が降るなら島内観光バスということになるのかな。

ドンオウレ

約40分で最大の島であるイニシュモア(Inishmore/Árainn)のキルロナン(Kilronan/Cill Rónáin)に到着。あれ、向こうの方は明るくなっているし、雨脚も弱くなっているので、通り雨だったということかな。ということでレンタサイクルで島を回ることにして、下船するやすぐ近くの店で自転車を借りる。港近くのコンビニで買い物をしてから、モデルコースを辿って坂を上る。斜面の中腹を進んでいくと、家が点在する道の両側には石積みで囲まれた畑地が一面に広がるようになる。似たような風景は本土のバレン高原(The Burren/Boireann)に向かうバスの車窓からも見たことはあるが、一度に目に入る石垣はこちらの方が多いのではないだろうか。さすがにぱっと見ただけでは土の様子までは分からないが、左は山の上から、右は下方の海岸線までずっと続く石囲いは印象的で、少し進んでは立ち止まっては撮影というのを繰り返す。空はすっかり晴れて、絶好の観光日よりとなっている。分岐点の表示が判り辛くて一旦行き過ぎてしまったが、海岸線の形から判断して引き返し、枝道の急坂を自転車を押して上る。島内最高地点には灯台があり、夏には内部を公開している模様。少し離れた場所に遺跡が見えていたので、自転車を置いて小道を歩く。自転車にはスタンドが付いていないので、どこかに立て掛ける(か寝転がす)ことになるが、念のため持参したチェーンロックで柵に固定しておく。ドン・オウレ(Dún Eochla)は青銅器時代の円筒形の石積み要塞で、ガイドブックによると上からの眺めが良いそうである。立入禁止の表示はないようだったが、端が一部崩れている階段が不安だったので止めておく。ごつごつした石灰岩だから、見た目より安定しているのかもしれないけどね。代わりに砦の近くから、眼下に広がる島の南東側を眺める。辺りには黄色のカウスリップの他、ガイドブックに「珍しい花」として写真が載っている濃桃色の花が咲いていたけれど、日本の山や北海道の湿原でも見られるハクサンチドリの仲間だったりする(^^;

ドンエンガス

最高地点を過ぎれば当然下り坂となるが、石積みの間の道は曲がりくねり、路面に敷き詰められた石灰岩はごつごつして自転車では走りにくい。辺りには人の姿も家も見当たらず、あるのは見渡す限りの石囲いだけ。まるで迷路の中に彷徨い込んだようだったが、一本道だから迷ってはいないはず。でもこのまま進んでいても大丈夫なのだろうか~と少々不安になってきたところで、自動車が通れる道に出たので一安心。暫く進んで坂を越えると急に視界が開け、麓の集落の向こうに島の北西側が見渡せるようになる。左手奥の崖の上には、島内最大の遺跡が遠くからでも目立っている。坂を下って集落を抜け、主要道に戻って砂浜の脇を通り過ぎ、案内標識に従って駐輪場へ。ずらりと並ぶスタンドに自転車を置いて、ビジター・センター(Visitor Centre)で入場料を払って先程からずっと見えていたドン・エンガス(Dun Aengus/Dún Aonghasa)を目指す。入口からは坂道を歩いて15分と結構離れている。上の方から振り返ると、石垣が張り巡らされた島全体が一旦低くなってから高くなっているのが見渡せる。ドン・エンガスは崖の極みに築かれた半円形の要塞で、石積みの遺跡自体も文化的価値が高いが、特筆すべきはその立地である。海側は柵も何もなく、高さ90メートルの断崖絶壁となっているのである。そのまま近付くのは危険なので、観光客は地面にうつ伏せになって崖の端から海を見下ろしている。試しに身を横たえて恐る恐る覗いてみたが、あまりの高さに一瞬で首を引っ込めてしまった(^^; 少し奥まった岩棚から海岸線を見通せる場所があり、そこに立つと紺碧の海が連なる崖に挑み掛かるのが見える。砕け散った白い波がかなりの高さまで上がることもあるが、写真に撮るのは難しい。時折響く轟音は、どの辺りで波が砕けた音なのだろうか。

イニシュモア

島の北西端はそれほど遠くないようだったが、港には余裕を持って戻りたかったので、入口まで降りて自転車に乗ると南東の進路を取る。帰りは海岸沿いのルートを走ると、主要道沿いの集落を石囲い越しに見上げることになる。浜となっている場所には、褐色の海藻がびっしりと打ち上げられているが、これが人工土壌の素となっているのだろうか。途中で教会跡の標識が出ていたので近くまで行ってみたが、細い坂道がさらに続いていたので、少し離れた場所から撮影するにとどめておく。モデルコースを一通り回って、港に戻ったのが出航1時間半前。南側の遺跡に行くことも一瞬考えたが、早めに自転車を返却して海が見えるレストランに行くことにした。山のように積まれたスコーンにも惹かれたが、昼はマフィン一つを食べたきりだったので、地元産の魚のチャウダー(アイリッシュ・ソーダブレッド添え)とサラダを注文して、港の景色を眺めながらかなり遅めの昼食。すぐ近くにあるアランセーターの店に行ってみたが、上階の工房は休業中だった。折角なのでセーターを買おうかと思ったのだけれど、リムリック市内の店やシャノン空港の売店の大元の店になるので、割安な機械編みセーターは以前買ったものと同じデザインしかなかったりする。色違いを揃えるのも悪くないのだけれど、どのサイズが最適だったか覚えていないこともあって、結局買わずに店を出る。
帰りの船は2隻が続航していたようだが、行きもそうだったのかもしれない。ロッサヴィールから平屋(?)のバスでゴールウェイに戻ったところで、フリーツアーが終了。昼食が遅かったので、夜は例によってサンドイッチで済ませる。宿に戻ってから寝支度をしていると、窓の外でまとまった雨が降る音が聞こえた。結局到着直後以外は島にいる間はずっと晴れていたので、天気には相当恵まれた一日だった。