2010/04/30(金)

最新の予報でも今日は午後から雨が降るということだったので、早めに出掛ける。中央駅を通り過ぎてリンデンホフ(Lindenhof)に立ち寄って、高台からチューリッヒの街並みを見下ろす。期待通り晴れていたけれど、東向きなので思いっきり逆光だったりする。駅に戻って乗車券を購入してから発車案内を見ると、ちょうどベルン(Bern)ゆきの列車が出るところだったのでホームへ急ぐ。始発のチューリッヒから終着のベルンまでは無停車で、途中のオルテン(Olten)からは高速新線に入り、約1時間でベルン中央駅(Bern Hauptbahnhof)に到着。ホームが地下にあってカーブしているので方角が判り辛く、危うく出口を間違えそうになった。一旦ホームに降りて反対側まで歩き、"City"と英語で書かれた案内に従って地上に出てさらに進んで、ようやく目的の出口に辿り着いた。空は雲に覆われているが、まだ雨が降る気配はなさそう。

ベルン旧市街

ベルンはスイスの首都だが、人口の上では国内5番目。歴史的な街並みが残り、「ベルンの旧市街」として世界遺産に登録されている。旧市街のメインストリートは4つの通り名を持つが、一直線に繋がっている。路面電車が走る石畳の道の両側に、外観が似ている建物が見渡す限り続いていて、とても印象深い景観である。建物には色とりどりの旗が掲げられていて、一階部分はアーチが連なるアーケードとなっている。また、ベルンの街には特徴的な像を伴う噴水が各所にあり、それを見て回るのも一つの楽しみである。大通にも笛吹きの噴水(Pfeiferbunnen)や、射手の噴水(Schützenbrunnen)などが道のど真ん中にあって、路面電車や自動車は両脇に避けて走ることになる。時計塔(Zeitglockenturm)まで来たところで、大通を少し外れた所にある子喰い鬼の噴水(Kindlifresserbrunnen)を見に行く。不思議なモチーフであるが、悪い子を懲らしめるための“なまはげ”的な存在だったようである。旧市街は東西に細長いので少し歩けばすぐに北の端となり、コルンハウス橋(Kornhausbrücke)が近くにあったので少しだけ渡ってみる。アーレ川(Aare)からはかなり高い位置にあり、川幅も広く両岸の眺めが良かったので、写真を撮ってから引き返す。

バラ園より

路面電車は時計塔の手前で南北二手に分かれるため、大通の西半分は自動車と歩行者だけになる。道端には地下室への入口が並んでいるが、中には店として営業しているのが垣間見える場所もある。駅から約1kmで旧市街は終わりとなる。いつの間にか天気が回復していて、ニューデック橋(Nydeggbrücke)を渡る頃にはすっかり晴れていた。この後高台に行くまでは天気がもっていればいいのだけれど、と思いつつもとりあえず橋を渡ったところにあるクマ園(Bärengraben)へ。"Bern"という街の名は熊(Bären)に因んでいて、市章に熊が描かれるなど街のシンボルとなっているので、飼育するのも当然といったところか。飼育施設は地下トンネルを通って川岸まで続いていたが、近くの斜面に一頭いるのを見掛けたので、タイミングを見計らって撮影しておく。その後は案内標識に従ってひたすら坂道を上がっていくと、次第に展望が開けてくる。バラ園(Rosengarten)に着いたところで、眼下にはベルンの旧市街とそれを取り巻くアーレ川、そしてその外側の街並みという景色が広がっている。蛇行する川に囲まれた要塞のような街を高台から見下ろすという構図は、スペインのトレドと似ているが、あちらが乾燥した平野の中にあるのに対して、こちらは緑豊かな盆地の中となっている。バラの季節にはまだ早かったが、シャクナゲが見頃を迎えていたし、スイセンも少し咲き残っていた。そして公園内でアルペンホルンの練習をしている人がいた。

ベルナープラッテ

坂を下りて旧市街に戻り、裏通りに入って大聖堂(Münster)へ。まずは尖塔の入場券を購入して、ひたすら螺旋階段を上りに上る。100mの高さにある展望台に出ると、川に囲まれた街並みを内側から見下ろすことが出来る。まだ好天が続いていたので、遠くにベルナーアルプス(Berner Alpen)の峰も見えている。今日は良くて曇りだと思っていたので、晴れた状態で2ヶ所からの景色が見られるのは望外である。順路に従って下りは別の螺旋階段を使用。大聖堂を出た後は裏手にある高台からアーレ川を見下ろす。眼下では幅広い川に緑の水が蕩々と流れているが、2005年8月の豪雨では、この川が溢れてベルンは水害に見舞われたとのこと。当時滞在していたバイエルンやザルツブルクでは、連日土砂降りとなっていた。有料エレベーターに乗れば川岸の近くまで降りられるようだったが、そろそろ疲れ始めていたのでパスして周辺を散策。そうこうしているうちに正午が近付いてきたので、時計塔前の広場に行ってからくり時計が動き出すのを待ったが、仕掛けはわりとあっさりしたものだった。そろそろ昼食にしようとコルンハウス橋の袂にある"Kornhauskellar"へ。こちらは昔の穀物倉庫の建物の地下にあるレストランで、地元名物のベルナープラッテ(Berner Platte)を白ワインと一緒に注文。

食後は大通に面したアインシュタインの家(Einstein-Haus)を見学。かのアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)が1903年から3年間暮らした部屋で、最後の1905年は「光量子仮設」「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」など重要な論文を発表した“奇跡の年”と呼ばれている。当時の部屋を再現した1階(日米式に数えると2階)の窓から見える風景は、アインシュタインが眺めたものとあまり変わっていないようである。上階には詳細な経歴や関連した物品の展示があったが、そういえば若い頃の写真を見るのは初めてだったような気がする。博物館を出た後は、旧市街の南にあるキルヒェンフェルト橋(Kirchenfeldbrücke)を渡る。この橋も高さが40メートル近くあり、欄干に近付くと腰が引けるくらい(?)眺めが良い。対岸のヘルヴェティア広場(Helvetiaplatz)の先には博物館が集まっていて、その中のベルン歴史博物館博物館(Historisches Museum Bern)にもアインシュタイン関連の展示があるとのことだったが、午後はチューリッヒ観光に充てたかったので、橋を一往復しただけでベルン中央駅に向かう。ジュネーブ方面からのIC(特急)が混んでいたらベルン始発のRE(急行)に乗るつもりだったけれど、ICにも空いている車両があったので帰りも無停車でチューリッヒへ。

リンデンホフより

チューリッヒに戻ってもまだ天気は大丈夫だったので、再びリンデンホフに上る。午前中より雲が多くなっているが、やっぱり順光の方が撮影し易い。その後は聖母聖堂(Fraumünster)や聖ペーター教会(St. Peterskirche)などを訪れて、出来れば大聖堂(Grossmünster)の鐘楼にも上るつもりでいたけれど、朝から寝不足状態で歩き続けた疲れがひしひしと感じられるようになっていたので、駅地下の売店で軽食を買ってから宿に引き上げる。夕食に本場のチーズフォンデュ(Käsefondue)も食べてみたかったのだけど、昼にしっかり食べた後だとカロリー過多になりそうだし。という訳でおとなしく宿の部屋でサンドイッチを囓っていると、窓の外では本降りの雨。タイミングとしては丁度良かったのかもしれない。とにかく眠いので早めに就寝。