2010/09/05(日)

朝早く宿を出て、旧輪島駅で荷物を預けてから、朝市会場を通り抜ける。まだ始まったばかりだったせいか、思ったよりも店は疎らだった。いろは橋を渡って乗船場に向かったが、目立つところに看板がなかったので、事務所の場所は少々分かり辛かった。往復の乗船券を購入した後、少し離れた桟橋から乗船。ドアを開けて船室に入ると、いきなり煙草の臭いが。えっ、なんたる不届き者がと思ったら、何とも信じ難いことに船室の後ろが、開放空間の「喫煙コーナー」になっていた。船室はそれ程広くなくて排気施設もないので、一番遠い側に座っていても煙草の臭いが始終漂って来る始末。晴天で波も殆どなくそれ程揺れる訳じゃなくても、効き過ぎの冷房と煙草臭のせいで酔いそうになってきたので、たまらず船室の外に飛び出す。外は暑くて油の臭いがしたけれど、それでも中よりはましかなと思っていたら、上部デッキに出る階段があるのに気付く。航行中も使えるようだったので登ってみると、操舵室の後方が旅客用スペースとなっていた。屋根や椅子はなくても、風に吹かれていれば結構快適だったので、到着間際までずっとそこで過ごす。輪島からほぼ真北に向かい、ほぼ中間にある七ツ島(全て無人島)の近くを通り過ぎ、1時間半で舳倉(へぐら)島に到着。

舳倉島は輪島沖50kmにある1平方キロの小さな島で、最も高い場所でも13mしかない。海女漁が主産業で、昔は夏の漁期だけ島に住み、冬は全員本土に引き上げていたそうである。渡り鳥の中継地点となっているので野鳥観察の名所だそうだが、当然のことながらシーズンは春と秋。学生だった頃、敦賀から小樽に向かうフェリーに乗って、翌朝最初の船内放送で「ただ今、舳倉島沖を通過中」と聞いたのが、この島を知った最初であった。それから21年経って、ようやくその島の土を踏むことになった。実は過去に2回、今回と同じような旅程で舳倉島に来る計画を立てたのだけど、どちらも低気圧の影響で旅行を中止したため、3度目の正直なのである。

舳倉島の海

島の南東部にある港から、左回りで一周を始める。小中学校の前を通り、島で唯一の大木がある伊勢神社を経由して、北東端にある恵比寿神社へ。板状摂理の岩の上にあり、季節風から守るための石垣に囲まれている。島には石積み(ケルン)が多いが、船から見て平坦な島を少しでも目立たせるように作ったのだとか。また小さい島ながら、神社の数が多いのも特徴である。真夏日で遮る物のない海岸を歩くのはかなり暑いが、海は色は南国のように綺麗である。島の北側に回って観音堂を過ぎれば、竜宮に繋がっていると言い伝えられる龍神池があり、そのほとりには龍を祀った無他神社がある。島は東西方向に細長い形をしているので、一旦中央部に入って灯台の隣にある「愛らんどタワー」に上る。水道タンクを利用した展望塔で、2~4階には舳倉島周辺の資料が展示されている。5階が展望台になっていて、島全体を見渡すことが出来る。飲食禁止ではなさそうだったので、輪島から持参した菓子パンを食べて休憩。

舳倉島漁港

近くにある野鳥観察小屋は、餌台があって鳥を呼び寄せるようになっていたが、やはりこの季節だと鳥の姿はない。外周道に戻り北西側の金比羅神社、八坂神社を経て、南西端にある奥津比売神社・大和田神社を過ぎれば、南岸に沿った道の先に集落が見えて来る。漁港を回り込んで島を一周した後、中央部の灯台と港内に浮かぶの弁天社の近くまで行ってから、乗船場近くの東屋で休憩。船が出るまで2時間もあったけれど、さすがにもう一周する元気はなかったので、僅かな風を待ちながらベンチで過ごす。帰りは下の船室に入ってみたところ、上の船室とは前方の階段で繋がっているだけなので、煙草臭は殆ど感じなかった。窓がなくて外が見られないのは残念だが、気分が悪くなるよりはずっといい。ただ下の船室も冷房が効き過ぎで、体がすっかり冷えてしまったので、やはり途中で上部デッキに避難することになった。

金沢カレー

輪島港で下船して、旧輪島駅まで歩くこと20分。次の特急バスまで1時間以上あったので、構内のカレー屋に入る。そういえばステンレスの容器に入った濃い色のカレーって、DPZの記事でも紹介されていた金沢カレーだよね。待合室で休憩してから荷物を取り出して、金沢ゆきの最終バスに乗車。穴水から能登有料道路に入り、2時間と少しで金沢駅西口に到着。夜遅くなって疲れていたので、特急券を買って先発の「サンダーバード」に乗車。次の停車駅の小松で下車して、駅前の宿にチェックイン。以前なら金沢発の寝台特急「北陸」に乗って帰るという選択肢もあったが、今春廃止になったのだから仕方がない。さすがに夜行バスは体力的にキツ過ぎるし(^^;