2011/04/15(金)

宿を早めに出て泊港まで歩き、旅客ターミナル「とまりん」の窓口で乗船券を購入し、コンビニで買い物を済ませてから、久米島商船のフェリー「ニューくめしま」に乗船。沖縄本島を離れて最初に見えて来るのが神山、クエフ、ナガンヌの3島からなる慶伊瀬島(チービシ環礁)。昨年末、粟国島に向かう途中に見た島で、上空から眺めると鮮やかな色の水を内包した美しい珊瑚礁だけど、沖行く船からだと砂州のように見えてしまう。続いて前島や黒島などを見ながら慶良間諸島の北方を通り、那覇から2時間と少しで渡名喜島に到着。1日2往復の久米島航路のうち渡名喜に寄港するのは通常、上下とも午前便だけだが、4~9月の金曜日のみ久米島発の午後便も立ち寄るので、その日だけは那覇から日帰りすることが出来る。という訳で今回は木曜深夜に那覇入りすることとなったのである。

フクギ並木

空は薄曇りだけど日が射しているし、午後からは晴れの予報。ターミナルの地図を確認してから全長僅か25メートルの県道を歩くと、渡名喜村役場の前に出る。途中には島で唯一の信号機もある。役場前から集落の中に続く村道1号線は、夜になると足下がライトアップされるが、日帰りでは勿論それを見ることは出来ない。家々は赤瓦の屋根が多く、敷地は暴風対策として道路より掘り下げてあるのが渡名喜島の特徴である。入口にあるヒンプンのことを、この島では「ソーンジャキ」と呼ぶらしい。風除けのフクギが周囲に植えられているが、5メートル以上と高さが半端ではない。幅2メートルの道の両側に深緑の高木がずっと続いているので見通しが利かず、まるでベルサイユ宮殿の庭園に迷い込んだかのようである。といっても要所要所に観光名所への案内標識が出ているので、実際に道に迷うことはない。

道の途中で角を曲がって一旦集落の外に出ると、急に視界が開けて畑が広がる。島北部の山に向かう坂道を登り、さらに遊歩道と階段を登り続けて西森園地へ。展望台からはすぐ近くの入砂島(連ドラのオープニングに登場するらしい)を眺めることが出来たが、遠くが霞んでいるためその向こうの久米島は見えなかった。遊歩道は途中で分岐していたので、もう一方の道も辿って行くと、ワタンジ崎へと続く斜面の途中で終わっていた。それ程の高い訳じゃないし海からもちょっと遠いので、景色としては今ひとつだったけれど、久米島が見えるくらい天気が良い日だと印象が違うのかもしれない。戻る途中で標識に従って「水田」にも立ち寄ってみる。沖縄の離島だと水田も名所になるのかなと思っていたら、山の中なのに水が湧き出る場所「水田(ミフーダー)」だった。ただし祭祀用の稲を植えているので、実態としては水田だったりする。集落に戻って「ふくぎ食堂」で昼食。

テッポウユリ

食後は北東にある上ノ手展望台に登って見下ろすと、集落全体がフクギの森の中に埋もれているように見える。そして左を向くと、アガリ浜から島南部の山まで見渡すことが出来る。道の先にある里遺跡まで行ってから麓に降りて、アガリ浜に沿って歩き続ける。集落が終わったところで崖が海に迫り、複雑な形をした岩肌が露出している。「シュンザ」と呼ばれる断崖の直下には、「アマンジャキ」という名の旧道があるが、崩落の危険があるため現在は通行禁止。アーサー(アオサ)の養殖が行われているアンゼーラ浜まで足を伸ばしてから、島南部の山に分け入る一周道路の急坂を登り始める。時折振り返ると東側の海を見下ろせるが、光の加減なのか上からの方が海の色は綺麗に見える。坂の途中で島尻毛の遊歩道が始まり、海の方に向かって歩き始めると、谷間の斜面の至る所にテッポウユリの白い花が咲き乱れ、村花のカワラナデシコやナリヤランも咲いている。事前情報通り木道が破損していたり、草に覆われている場所も多かったけれど、一回りしてから道路に戻る。

大岳展望台より

さらに坂道を登り続け、中腹にある東屋で少し休憩。大岳展望台はそこから真っ直ぐ先に見えていたが、道路の方は勾配を緩和するため北に迂回している。やっと展望台の標識が現れたと思ったら、そこから道路を外れてまだ階段を登ることになる。既に歩き疲れていたけれど、今日の上りはこれが最後ともう一頑張り。展望台からは天気が良いと久米島や粟国島、沖縄本島まで見えるそうだが、相変わらず視界がそれ程良くないので、慶良間諸島が霞んで見えるだけ。反対側には入砂島が違う角度で見えている。そろそろ帰りの時間が気になり出したので、あまり長居をせず西側の呼子浜まで道路を一気に下る。海岸近くにはヌーチュヌーガ御嶽(ウタキ)の案内があったが、急崖を登った先にあるので行くのはかなり困難なようである。海岸沿いに北に向かい、高層ビルのようなゴミ焼却場の前を通り、石灰岩の岬を曲がるとようやく集落までの一周が完了。船が来るまで1時間近くあったので、渡名喜番所(小中学校跡)の樹齢200年以上のフクギ群を見上げてから、集落内を名残の散策。

待合室で休憩した後、久米島から来たフェリーに乗船し、船内ではiPodで音楽を聴きながら少し仮眠。那覇到着は午後6時なので、朝出港してから9時間半が経過している。今回の渡名喜島上陸により、定期船または橋で渡れる沖縄の島で訪れていないのはあと3つとなる。夕食は国際通りの「波照間」で、沖縄料理を石垣島の泡盛「諸福」と一緒に。