2011/04/30(土)

一泊だけでチェックアウトして、リヨン駅に向かう。途中でレンガ造りの高架橋を潜るが、これはバスティーユ線(Ligne Bastille)の廃線跡で、高架下には今でも店が並び「芸術の高架橋(Viaduc des Arts)」と呼ばれているのだとか。高架上は遊歩道になっているので歩いてみたいところだけど、またの機会にということで。

リヨン駅

ヨーロッパの大都市では鉄道は方面別のターミナルを設けていることが多く、そのうちの一つリヨン駅(Gare de Lyon)は南東方面への出発駅となっている。このように行き先の街の名前を付けることも珍しくないのだけど、東京だと例えば東北本線の始発駅(上野)のことを“仙台駅”、中央本線の始発駅(新宿)のことを“甲府駅”と呼ぶようなものだから、不思議な感じがする。時刻表を見ても各列車の発着番線は書いていないので、駅入口近くの発着案内の近くで待機。発車20分くらい前になって発車ホームを示す電光表示が出るとぞろぞろと移動が始まるが、頭端式ホームの一部が封鎖されていたため、隣のホームの中程まで行ってから地下道を経由することになる。"TGV Duplex"という2階建て列車の2編成併結のの20両編成だったが、指定車両は地下道からはすぐ近くだった。どうやら"TGV Family"という家族向け列車との併結になっていたようである。指定座席は1階で進行方向と逆向き。ヨーロッパの列車は座席の向きが固定されているので、ハズレの確率は2分の1。今回利用した予約サイトは座席属性を選ぶことが出来るのだけど、この列車は予約時点で逆向きしか空いていなかったのだから仕方がない。とはいえ1等車のソロシートなので、快適なのは間違いない。早めに予約すると、2等車の正規運賃よりもずっと安くなるのでお得である。

リヨン駅を出発した列車は、在来線を少し走ってからすぐに南東高速線(LGV Sud-Est)に入る。日本の新幹線とは異なり、平原の中に敷設された地平の線路を走るのでそれ程スピードを実感出来ないが、営業最高速度は「のぞみ」よりも速い320km/hである。車内検札の際にA4用紙に印刷した電子チケットを提示すると、2次元コードを読取機で確認するシステムになっていた。昼前にビュッフェ車両に行って、サンドイッチとジュースの軽い昼食を取ってから席に戻る。列車はローヌ・アルプ高速線(LGV Rhône-Alpes)を経て、地中海高速線(LGV Méditerranée)に入るが、その境目はよく分からない。フランス新幹線TGV(Train à Grande Vietesse)は都市部では在来線に乗り入れるため、高速線上に設けられた駅は僅かで、それも殆どが在来線とは接続しない新駅である。しかも利用列車は3時間以上無停車だったりする。アヴィニョンTGV駅(Gare d'Avignon TGV)を通過した後、在来線に合流して速度を落とし、地中海(Mer Méditerranée)が見えてくると程なく、マルセイユ・サンジャン駅(Gare de Marseille-Saint-Charles)に到着。

イフ城より

案内に従って地下鉄(Métro de Marseille)の駅に移動し、券売機で切符を購入。一瞬操作に戸惑ったが、パリのメトロと同じく、中央のバーを回してカーソルを移動し、左右のボタンで決定/取消を選べばいいのだった。1号線(Ligne 1)に乗車して、2つ目の旧港(Vieux-Port)で下車。階段を上がると魚の匂いがし、外に出ると目の前に港が広がり、小さな船が所狭しと停泊する絵に描いたような港町である。近くの宿にチェックインして、部屋で少しだけ休憩してから、早速午後の観光開始。ベルジュ埠頭(Quai des Belges)の乗船場で切符を購入してフリウル諸島(Iles de Frioul)ゆきの船に乗る。一時は小雨がぱらついていたけれど、天気は回復しそうだったのでデッキに座る。着いたばかりのマルセイユを後にし、旧港を出るや船は速度を上げて沖へと進む。最初の寄港地イフ島(Ils d'If)で下船して、階段を登ってイフ城(Château d'If)へ。マルセイユ入口の要塞として造られたが、後に監獄となった建物で、小説「モンテ・クリスト伯(Le Comte de Monte-Cristo)」の舞台として知られている。前庭の展望所からマルセイユの街並みを眺める。天気はすっかり回復して、青い空と紺碧の海が美しい。場内を見学した後は、屋上に出て周囲を見渡す。そこから早足で船着き場に戻ると、ちょうど次の船に間に合うタイミングとなった。

ノートルダムより

帰りの船はマルセイユ直行ではなくフリウル島(Ile de Frioul)を経由するが、冬場などの荒天時はイフ島には立ち寄らず、フリウル島単純往復となる。時間がなかったのでフリウル島では下船せず、そのままマルセイユに戻る。次の目的地まで歩いて行けなくもなかったが、海抜150m以上とかなり高い場所にあるので、観光用のプチトラン(petit train)を利用することにする。乗り場を探したら埠頭の反対側で、辿り着いた時には順番待ちの長い列。なんとか次の便にぎりぎり乗れたけど、出発しても旧港前の渋滞を抜けるのに時間を要する。サン・ヴィクトール修道院(Abbeye St-Victor)前を経由して、一旦海岸通りを走ってから住宅地を抜け、急坂を上り詰めた先にあるノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂(Basilique Notre-Dame de la Garde)下にある広場で下車。そこから階段を登り続け、さらに聖堂前の階段を登って聖堂内を訪れてから、テラスに出てとくと景色を眺める。旧港は勿論のこと、マルセイユ市街や背後の山地、地中海や先程訪れたフリウル諸島などが見渡せる。様々な角度から写真を撮って、帰りのプチトランに乗車。

サーモンのグリル

レストランの夕食営業まで時間があったので、一旦宿に戻ってクロワッサンを食べながら休憩してから再び外出。ガイドブックに載っている店の前まで行ってみたけれど、営業中かどうかさえ判りづらい状況だったので、宿のすぐ近くのブラッスリーに入る。サーモンのグリルと一緒にグルナッシュ種を使った地元のロゼをグラスで注文。初夏なので冷えたワインが美味しい。そういえばしっかりした食事を取るのは、機内食以来になるのかな。