朝早く宿を出て、岡山駅のロッカーに荷物を預けてから、窓口で往復の切符を購入。朝8時前のホームに降りると沢山の乗客が並んでいたので驚いたが、同じホームから直前に発車する山陽本線の下り列車を待つ人が殆どだった。次の特急列車は岡山始発ながら、入線から発車まで5分足らずという慌ただしさ。一番後ろの自由席に乗り込むと、程なく列車は動き出す。倉敷に停車した後は伯備線に入り、吉備線と合流する総社も通過して、始発から30分と少しで目的地である備中高梁(びっちゅうたかはし)に到着。
駅前広場から大体線路に沿って北に向かい、高梁市役所の前を通って紺屋川を越え、小高下谷川に行き当たったところで、一旦左折して滔々と流れる高梁川の川端まで出て、バス停の位置と時刻を確認してから元の場所に戻り、小さな川沿いに坂道を上って登山口へ。駅からここまでが1kmと少し。そして標識によるとここから城までが約3km。それなら「駅から城まで徒歩1時間」というのは無理なのでは。てゆーかその情報を元に立てた今日の計画が狂ってしまう、と思っていたら何のことはない、3kmというのはあくまでも自動車道の距離であって、徒歩でショートカット出来る登山道が別にあることにすぐに気が付く。これなら心配ないなと思ったのも束の間、車道が大きく迂回するところをほぼ真っ直ぐ登るので、結局本格的な山道である。山間部の肌寒い朝でも、えっちらおっちら登っているうちに汗ばんで来る。上りはきつかったものの、思ったよりも早く鞴(ふいご)峠の駐車場近くに出る。車で来た場合もここから先は徒歩での上りとなる。休日は自家用車乗り入れ禁止となり、麓の城見橋駐車場からシャトルバスが走るのだとか。
登山口から20分くらいで石垣が見えて来たが、そこはまだ中太鼓櫓跡。はるか眼下に横たわる高梁市街地を眺めてから、さらに5分ほど登ってようやく大手門跡に辿り着く。しかしそこから先も階段と坂道を登って、三の丸、二の丸を通り、急な石段の上にある入口で入場料を払う。本丸を横切って最後の石段を上ると、やっとこさ海抜430mの臥牛山小松山山頂にある備中松山城の天守閣に辿り着く。現存12天守のうちの1つで、勿論最も高い場所にある。単に「松山城」と呼ぶと愛媛県の城と紛らわしいため、「備中松山城」と呼ばれることが多い。2層2階の天守の最上階は、攻撃を防ぐための覆いの隙間から外を眺めることになるため、写真撮影向きではない。江戸時代当時の天守だから、当然と言えば当然。
時間があまりなかったので、裏手にある二重櫓を見に行った後は、足早に下山する。といっても急ぎ過ぎて足を傷めないように気を付けながら。麓に降りても駅近くのコンビニに立ち寄る余裕はなかったので、自販機で果肉入り飲料を買って空腹をしのぐ。高梁川河畔の停留所からバスに乗り、伯備線沿いに北上。途中「肉谷橋」というバス停があって驚く。「肉」という字を使った地名は初耳だったので。備中高梁から2つ先の備中川面駅を経由してから、進路を西に転じて山間部に向かう。高梁市街地を出てから約1時間で、終点の吹屋に到着。ベンガラ塗りの瓦と格子の家が連なる集落は、近隣地区を含めて「吹屋ふるさと村」を名乗り、休日にはボンネットバスが各地区を結んでいるが、滞在予定は1時間しかなかったのでパス。路線バスは1日に3本しかなく、備中高梁駅周辺とと吹屋の両方を日帰りで観光しようとすると、必然的にそういう選択になるのである。
バス停近くにある江戸時代中期の建築で、元ベンガラ製造所の「片山邸」(国重要文化財指定)と、その向かいにある明治時代の商家の建物を利用した「郷土館」を続けて見学した後、集落を通り抜けたボンネットバスを撮影してから、高台にある吹屋小学校へ。築百年を越す現役では最古の木造校舎だったが、3月末で廃校となっている。連ドラのロケにも使われたらしいが、残念ながら番組は見ていない。集落に降りて時間の許す限り街並を散策。ガイドブックやポスターの写真だと、鮮やかな赤褐色に揃った瓦がずっと続いているように見えるが、実際の色はばらついていておとなしめな印象。一斉に塗り直した直後に撮影したのか、夕陽など光線の加減だったか、あるいは画像処理だったのか(^^; 写真のように2階から甍の波を眺めることが出来たら、また違って見えたのかも。
1時間後の折り返しバスに乗って、高梁市街地に戻ったのは午後2時過ぎ。かなり空腹になっていたけど、時間節約のためそのまま観光を続ける。町屋通りでは歩行者天国にして雛祭りを開催中で、大勢の観光客で賑わっていたので、幾つかの家の玄関先に飾られている雛人形を見て回る。4月になっても雛祭りが続いているのかと驚いたが、後から調べると桜の時期だけ開催しているようである。予定外の寄り道だったので、入口付近だけで切り上げて、再び小高下谷川沿いの坂道を上って、踏切を渡った所にある武家屋敷地区に向かう。共通券を購入して、旧折井家と旧植原家を見学した後、国の名勝に指定されている頼久寺の庭園を鑑賞。
桜がようやく開花し始めた紺屋川の並木を経由して、駅に戻ったところで観光終了。コンビニで調達したサンドイッチで遅めの昼食。特急で岡山に戻り、地下街のスタバで休憩しようとしたら混雑していて座れそうになかったので、マフィンとカフェラテをテイクアウトにして、空港ゆきのバスの車中でコーヒーブレーク。空港に着いた時点でプレミアムクラスに空席があったので、勢いでアップグレード。カード会社のラウンジで一休みした後、土産を購入してから搭乗待合室に進む。航空会社のラウンジも出来る予定だけど、完成は8月とまだ少し先。帰りの飛行機は予定通りの787。導入当初は国際線用のシートを搭載しているので、プレミアムクラスに乗るなら今がお得かも。今年度から赤ワインはボルドー右岸地区になるはずだけど、まだ在庫が残っているのか、昨年度提供していた左岸地区のが出て来たりする。羽田到着はほぼ定刻通りで、高速バスにちょうど良いタイミングだったので、最終便に乗って帰宅。