2007/08/25(土)

事前情報通り、宿の朝食はかなり豪華。暖かいソーセージやマッシュルームって、スコットランドの朝を思い出す。今日雨で明日は曇りという予報とその反対の予報があったけれど、とりあえず今朝は曇りで雨も暫く降らない感じだったので、今日のうちに遠出をすることにした。宿から地下鉄の駅まで少し離れているので道が分かるか心配だったが、その問題は朝起きて窓の外を見れば一瞬で解決した。この辺りでは高架区間になっていて、駅の場所は一目瞭然だったのである。

エドゥアルド7世公園

リスボンの地下鉄は4路線あって、色で呼び分けられている。まずはイエローライン(Linha Amarela)に乗って、ブルーライン(Linha Azul)に乗り換えて、エドゥアルド7世公園(Parque Eduardo VII)へ。ガイドブックによると夜は治安の良くない場所らしいが、朝のこの時間は犬の散歩やジョギングをする人がいたし、観光客も既に来るようになっていた。斜面になっている公園の一番高い場所に行って、幾何学庭園ごしにリスボンの街並みを見下ろす。遠く海のように見えるのは、河口近くで幅が2km以上もあるテージョ川であるが、その対岸まで見渡すことが出来る。公園内にはジャカランダ並木があるらしいが、歩きながら探しても見付けられなかった。花の季節だと遠くからでも目立つのだろうけれどね。ポンバル侯爵広場(Praça Marquês de Pombal)に出たところで、地下鉄でレスタウラドーレス(Restauradores)に移動。

ここから国鉄ロシオ駅(Estação do Rossio)に行こうとしたが、駅が見当たらない。地図からすると駅舎と思しき建物もあったけれど閉まっているし、裏手方面が工事中で通行止めになっている。もしかしてガイドブックでは2006年6月までとなっている駅の閉鎖がまだ続いていたりするのだろうか、と地下鉄の駅の案内所で確認したらその通りだった。ガイドブックを買った後に出た最新版を買い直さなかったのが敗因になるとは、思いもしなかった。仕方なく動物園駅(Jardin Zoológico)に移動して、暫定停車駅のセッテ・リオス(Sete Rios)から郊外線に乗車。日本語で「証明写真」と書いてあるスピード写真機を複数の地下鉄駅で見掛けたということは、纏めて導入したということなのだろうけれど、日本語で「1分間」となっているのにポルトガル語では「2分間」となっているのがお茶目。

ムーアの城跡

リスボンから40分で終点のシントラ(Sintra)に到着。この町の「文化的景観」はユネスコの世界文化遺産に登録されていて~ということを成田から来る途中にガイドブックで知って、急遽来ることにしたのであった。駅前の観光案内所で地図と時刻表を貰って、名所循環のバスに乗車。このあたりのバスが1日乗り放題になる"Bilhete Turístico Diário"を購入して、最初の目的地であるムーアの城跡(Castelo dos Mouros)を目指す。バスは旧市街を抜けると、細い山道を登り始める。バス停はチケット売場の側であるが、そこから城跡までは15分以上歩くことになる。ムーア人により築かれポルトガル王が攻め落とした後修復されたものの、現在は山肌に続く城壁が残されているだけである。城壁からはシントラの街や大西洋まで望むことが出来るが、柵が結構低い位置にあるので、これだけ眺めが良いとかえって怖かったりする。まぁ、千年以上後の観光客の安全を考えて作った訳ではないので、なるべく通路の真ん中を歩くようにする。最高地点までひたすら階段を登って展望を楽しんだ後は、バス停まで引き返す。

ベーナ宮殿

ちょうどバスが出た後だったので、それほど遠くない次の目的地まで徒歩で移動。ベーナ宮殿(Palácio Nacional da Pena)も切符売り場から入口までは相当離れていて、こちらは急坂になっているので別料金を払って専用バスに乗ることになる。様々な様式を寄せ集めた山上の城は印象深く、ノイシュバンシュタイン城で有名なバイエルン王ルードヴィヒ2世の従兄弟にあたるフェリディナンド2世が建築を命じたのだとか。宮殿内の公開場所を全て見学するチケットを購入したので、大広間から王族の居室、台所まで見て回った後は、城壁の見学コースを一周。山頂にある宮殿だけでなく、辺り一帯が広大な公園となっていて見所もいろいろあるようだけど、それこそ一日掛かりになってしまいそうなので、公園内のバスと路線バスを乗り継いで旧市街に出て遅めの昼食。仔羊のグリルを注文したら、肉とフレンチフライとライスのみが大量に出て来た。

階段や路地が印象深い街並みを少し歩いて、広場に面した王宮(Palácio National de Sintra)に入場。一面に白鳥が描かれた白鳥の間(Sala dos Cisnes)やポルトガルではアズレージョ(Azulejo)と呼ばれる青い磁器タイルで飾られた紋章の間(Sala dos Brasõs)も見事だったが、窓から見える街並みと背後に迫る山が借景となっているのも印象的。歩き疲れたところでシントラ名物のチーズ菓子、ケイジャーダ(Queijada)が有名な喫茶店で休憩。イタリアと同様、ポルトガルでも単に“カフェ”と注文したらエスプレッソが出て来るんだったっけ。

ロカ岬

バスで駅に戻ったところで、次に乗り継ぐバスまで1時間近くあったので、周辺を散策すると共食いキャラクターに出会ったりする。観光用の路面電車に乗るのは無理でも、写真だけでもと思って停留所まで行ってみたが、残念ながら出払っていたので、すごすごと引き返す。そうこうするうちにバスの時間となり、西に向かうバスに乗る。途中ずっと路面電車の線路沿いを走る区間があったので、写真には撮れなかったものの窓から車両を見ることは出来た。シントラから走ること40分、集落は次第にまばらになり海の近くまで出ると、そこはヨーロッパ大陸、ひいてはユーラシア大陸最西端のロカ岬(Cabo da Roca)である。古い灯台を見ながら遊歩道を辿ると、急崖の極みが公園になっていて、ポルトガルを代表する詩人カモンエス(Camões)の言葉が刻まれた碑が建っている:

AQUI......
ONDE A TERRA SE ACABA
E O MAR COMEÇA......

即ち「ここに地終わり、海始まる」。そういえば4ヶ月前はシンガポールで「ユーラシア大陸最南端」を名乗る場所(正確には大陸とは橋で繋がった島だけど)を訪れたのだから、残るは最北端と最東端かな~ってどちらも難易度がむちゃくちゃ高そう。遊歩道をさらに進んでカルスト地形の急崖と海が織りなす雄大な景色を眺め、石碑がある公園まで戻ったところで急に雨が降り出したので、慌ててビジターセンターに駆け込む。ここでは最西端到達証明書を発行してくれるということで、折角なので10ユーロの方を頼むと、古風な書体で氏名を書き込んで蝋印を押した証明書を、色紙に入れて渡してくれた。立派なものだけに、これを折り曲げずに日本まで持って帰れるかちょいと心配。

同じ方向のバスに乗って、反対側の終点カスカイス(Cascais)に出る。ポルトガル語では文節末のsはシャ行音になるらしいので、正しくは“カシュカイシュ”ということになるのかな。因みに首都の“リスボン”(Lisbon)は英語表記であって、ポルトガル語では“リシュボア”(Lisboa)になるのだとか。カスカイスは海岸のリゾート地で、それなりに見所もあるのだけれど、既に日暮れとなっていたので、そのままリスボンに向かう列車に乗り込む。そういえばシントラ駅よりもカスカイス駅の方が僅かに西にあるので、ここがユーラシア大陸最西端の駅ということになるんだね。終点のカイス・ド・ソドレ(Cais do Sodré)駅までは急行で約30分。地下鉄の始発駅に接続していたので、そのまま宿に戻る。それほど空腹でもなかったので、夜は持参したスナックで済ませる。