2007/08/26(日)

サンタジュスタのリフト

今朝の天気は薄曇り。靄で遠くの視界が遮られているものの、雨は降っていない。当初2日間を予定したリスボン観光が1日になったので、朝早くからでも観光可能な場所から先に訪れることにする。地下鉄でロシオ駅に出てフィゲイラ広場(Praça da Figueira)とロシオ広場(Rossio)を見学してから、すぐ近くのサンタ・ジュスタのエレベーター(Elevador de Santa Justa)へ。「黄金」を意味するオウロ通り(Rua do Ouro)に面して建てられた鉄塔に登るエレベーターで、リスボンカードを使えば地下鉄やバス、近郊電車だけでなく、このエレベーターにも乗れたりする。上階に着いてからさらに螺旋階段を登ると、カフェを兼ねた展望台に出て、辺り一帯を見渡すことが出来る。赤い屋根が整然と並ぶ旧市街の両側が丘陵地帯となっているが、家並みはどこまでも続いている。空は真っ青に晴れてきたものの、逆光になっているテージョ川は光が散乱する靄にすっかり隠されている。エレベーターの到着階は背後の丘陵と陸橋で結ばれていて、カルモ教会(Igleja do Carmo)の横に繋がっている。18世紀のリスボン大地震で現在は遺構として公開されているが、残念ながら日曜日は休みとのこと。

エレベーターで塔を降りて、オウロ通りを下って港に面したコメルシオ広場(Praça do Comércio)へ。陽射しが強く気温も上がってきたので、かなり暑く感じる。ここから路面電車で移動しようとしたら、電停には立錐の余地もないくらいの人集り。なかなか電車が来ないようで、15分くらい待たされてようやく来たのは小さな車両が1両きり。積み残しが出たようだけど、なんとか乗り込むことは出来たと安心したのも束の間、地下鉄や近郊電車と違って次の停留所の案内が一切ない。この辺りかと見当を付けて降りてみたら、一つ行き過ぎていたようだった。数百メートルばかり引き返すと、目的の建物が高台の上に見付かったが、今度は登り口が分からない。実は一度通り過ぎていた公園っぽい階段が、実は美術館の入り口だった~ということで少し遠回りになったものの、ようやく国立古美術館(Museu Nacional de Arte Antiga)に到着。ヨーロッパの絵画は勿論、タペストリーや彫刻、家具や絨毯、そして東洋美術も展示されている。日本を訪れたポルトガル人を描いた狩野派の南蛮屏風を、ポルトガルの美術館で日本人観光客が鑑賞するというのも、なかなか凄い巡り合わせかも。

一通り展示を見てから電停に戻ると、路面電車は丁度出た後で、またしても次の電車がなかなかやって来ない。ようやく姿を現したかと思えば、観光ツアー専用の赤い電車。一般用の黄色い電車はいつになったら来るのだろうと待ちわびていると、軌道上をやって来たのは路線バス。このバスでも目的地に行けることが分かったので、迷わずに乗車。ほぼ線路に沿って走って20分くらいでベレン(Belém)地区に到着。今度は良く目立つ建物の目の前で多くの乗客が一緒に降りたので、降り損なうことはなかった。既に正午を回っていたので、近くのカフェで一休憩。ベレン名菓のパステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)というのは、実は日本で言うエッグタルトのこと。ポルトガルではどこでも大概英語が通じたけれど、入口の店員はあまり英語が通じなかったようなので、ガイドブックに載っていた単語をかき集めて、注文を聞きに来た店員に"Dois pastéis de nata e um café com leite, faz favor!(エッグタルト2つとミルクコーヒーを下さい)"と頑張って頼んだら、英語が答えが返ってきたりする(^o^;)

ジェロニモス修道院

ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos)はエンリケ(Henrique)航海王子とバスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama)を記念して建てられたもので、石灰岩を用いた回廊(Claustro)の彫刻が見事。空は雲一つない快晴となり、色の対比もさらに美しい。巨大な建物は2つの美術館も兼ねているが、あまり時間がなかったので地下道を通ってテージョ川の岸に出る。陽射しが強い中を川に沿って500メートル歩くと、ベレンの塔(Torre de Belém)が見えてくる。船の出入りを監視するために16世紀に建てられたもので、四方を水に囲まれているため、見学者は橋を渡って中に入る。団体客を避けながら息を切らして階段を上り、塔の屋上に出て川の両岸に広がる展望を眺める。靄はすっかり払われてかなり遠くまで見渡すことが出来るようになっていた。河口の向こうに広がるのは大西洋。大航海時代の船は、この場所を通って出入りしていたのである。地下道を出たところにある発見者の記念碑(Padrão dos Descobrimentos)も見学するつもりだったけれど、結構行列が出来ていたのでパスして外観の写真だけ撮影。エレベーターで屋上に出ると展望が、ってったってすぐ近くの塔に登ったばかりだからね。帰りはまた川沿いに少し歩いて郊外電車のベレン駅へ。バテ気味になって到着してみると列車は出たばかりだったけれど、日陰のベンチに座って休憩しながら30分近く待てば、6両編成の高速列車が確実にやって来るからね。

カテドラル

地下鉄に乗り継いでケーブルカーに乗ろうとしたら、10分以上待っても来ない。急坂とはいえ200mと少しの距離なので歩いてみると、坂の途中で台車から外された車体が並んでいた。ありゃま、点検のための運休だったんだろうか。坂を登り切ってサン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台(Miradouro de São Pedro de Alcântra)に行こうとしたら、そちらも工事中で立ち入り禁止になっていた。展望台のすぐ下の歩道からも展望は得られたものの、少し低くなっている分、手前の屋根が視界を一部遮っているのが残念。すぐ近くにあるサン・ロケ教会(Igreja de São Roque)は、日本の天正遣欧少年使節が一月の間滞在した所。教会前の広場から下る道の軌道は地図に載っていなくて、路面電車が走っている様子もなかったということは、廃線になったということなのかな。カモンエス広場(Parça de Luís de Camões)から路面電車に乗って、谷底になっている旧市街を通り抜けて反対側の丘陵地帯へ。目的の建物が見えたところで停止ボタンを押したが、どうやら電停を通り過ぎたところで、またしても一つ引き返すハメに。手持ちの地図には電停の位置が描かれていないのだから、降りる場所を見付けるのはなかなか難しい。気を取り直して、狭い路地の中に2つの塔が聳えるカテドラル(Sé)へ。"Sé"という短い単語がカテドラルを意味するのだろうか。裏手にある回廊や遺構も見学してから、教会前の電停兼バス停でバスを待つと、今度はわりかとすぐに小型バスがやって来た。

アルファマ地区

電車通りを外れて急坂を登り、3つ先のバス停が終点のサン・ジョルジェ城(Castelo de São Jorge)の入口。城壁沿いに歩くと、眼下には南や西のパノラマが。さらに歩くと売店があったので、サンドイッチを買って休憩。本丸も半ば遺跡と化していたが、城塞の上を歩けるようになっている。ここもムーアの城と同じく柵が低いのでおっかなびっくり。現在は逆光となっている旧市街の風景も、日が沈む頃には幻想的な雰囲気になるらしいけれど、なにせ2時間も先の話なので、城を出て帰りは徒歩で坂を下る。サンタ・ルジア展望台(Miradouro de Santa Luzia)とその隣のポルタス・ド・ソル広場(Largo das Portas do Sol)からはアルファマ(Alfama)地区の小さな家々の屋根を見下ろすことが出来る。リスボン大地震の被害を免れてイスラム時代の面影が今なお残り、白壁の間には迷路のような路地が~という解説を読むと、中に入って写真を撮ってみなくなる。でも今日はかなり歩き回った後で、急な階段を幾つも降りてからまた登って戻ってくる気力はなかったので、ほんの入口を垣間見てから路面電車で旧市街に戻る。

終点のフィゲイラ広場と隣のロシオ広場は、光線の向きが変わって朝とは違う雰囲気に。宿に帰る前に今日はちゃんとした夕食を取ろうと思ったものの、ガイドブックに載っている店は日曜定休が殆どだったので、地下鉄の駅周辺で探して見付けた店に入る。折角なのでバカリャウ(Bacalhau)を使った伝統料理を注文してみたら、干しダラは塩気が強くてちょっと食べにくかったかも。付け合わせの野菜は美味だったのだけど。