2007/08/29(水)

地下鉄でアトーチャ・レンフェ(Atocha Rrenfe)に出て、長距離列車が発着するプエルタ・デ・アトーチャ(Puerta de Atocha)駅へ。地下鉄のホームから階段を上って改札を出た時はまだ地下だったはずなのに、同じレベルのまま進んでいくと「2階」に相当するコンコースに直結していた。あれれ、このあたりの地形ってどうなっているのだろう。難しいことは帰国してから考えようっと。手荷物検査を受けてから待合室へ。案内モニターに発車番線が出るのを待ってから、改札を通ってホーム階に降りて、高速列車"AVANT"に乗車。日本から予約したチケットは窓際だったが、残念ながら後ろ向きの固定座席。マドリッドを出てから南に向かい、途中無停車の僅か30分でトレド(Toledo)に到着。バスで訪れて短時間で効率良く観光するツアーもあったのだけど、半日以上掛けてゆっくりと街を楽しみたかったので個人旅行にしたのである。それに、折角なので列車にも乗りたかったしね。

ソコトレン

駅前のバス乗り場から旧市街ゆきのバスに乗って、終点のソコドベール広場(Plaza de Zocodover)で下車。ここは観光の拠点となるところで、すぐ近くにある案内所を探して、ソコトレン(Zocotren)という名の列車型の観光バスの乗車券を購入。出発まで時間があったけれど、眺めの良い座席を抑えておきたかったので、暑いのを我慢して右側の席で発車時刻を待つ。いよいよ出発となり、旧市街の石畳をガタガタと走行した後は、ビサグラ新門(Puerta Nueve de Bisagra)新門から街を出て橋を渡り、タホ川(Río Tajo)の対岸の道を登るとトレドの街並みを見下ろせるようになる。通常の自動車よりはゆっくりとしたスピードだけど、写真を撮るのはなかなか難しい。それでも街並みは右側にあるので、反対側の座席よりは有利だった。街の外側をほぼ一周したところで旧市街に戻り、石畳を暫く走ってからソゴドベール広場に戻る。あっという間の40分だった。

サンマルティン橋

広場を後にして、細道を通って市街中央部を抜け、道案内に従ってエル・グレコの家(Casa de El Greco)を目指したつもりが、あれれ、違う場所に出てしまったようだ。地図で確認すると、予定よりも少し北の方に来ていたので、外周道路沿いにトラシント教会(Sinagoga del Trasinto)まで進んでみたけれど、まだ見付からない。どうやら手持ちの地図が少々不正確だったようで、その辺りをぐるぐる回ってようやく見付けられたけど、改装のため閉館中だったorz さっき川の近くで見掛けた美術館に作品を移して展示中とのことだった。サンマルティン橋(Puente de San Martin)や川向こうの眺めが素晴らしいテラスを通って入館し、特別展"Los grecos del Museo del Greco"を鑑賞。数々の宗教画に混じって、エルグレコには珍しい風景画があって16世紀当時のトレドの全景が描かれているが、400年経った今でも街並みに大きな変化はないという。なお、元の美術館はエルグレコが住んでいた地区に建つ家の一つを改築したものだが、実際に住んでいた家の正確な場所は分かっていないらしい。

トレド大聖堂

そろそろ空腹になってきたけれど、行く予定のレストランは街の反対側にあるので、ほぼ中心にある大聖堂(Catedral)を先に見学することに。ガイドブックでによると入口は確かこの辺りだったはずだけど、と係員に尋ねたら反対側から入ることになっていた。装飾が見事な主礼拝堂(Capilla Mayor)や聖歌隊席(Coro)、エルグレコや他の作家の作品もある聖具室(Sacristía)や宝物室(Sala del Tesoro)と見所は多い。外に出てソコドベール広場を通り、太陽の門(Puerta del Sol)からビサグラ新門の近くのレストランへ。途中、展望の開けた場所もあったけれど、かなり空腹になっていたのでとりあえずは食事。メニューはスペイン語だったけれど、なんとか解読して地元料理のコシード(Cocido)と、もう一品はグリルチキンを注文。どこでも大概英語が通じたポルトガルと違って、スペインだとまるでフランスのように、半分くらいは通じなかったりする。スペイン語は4ヶ月半の付け焼き刃で単語も殆ど覚えていないような状態だったけれど、それでも全く知らないよりはずっとましだったので、ラジオ講座で勉強したのも無駄にはならなかった。

ビサグラ門から一旦外に出て、再び街に入り、城壁と街並みの組み合わせや、太陽の門の近くから眺める北側の眺望を楽しみながら、元来た道をゆっくり戻る。王城(Alcázar)はここ数年間は改装工事中のようだが、すぐ近くにある展望台からは、これまた東側の眺めが素晴らしい。街全体が高台にあるので、端に来れば展望が開けるのだけど、それぞれに眺めが違うのである。ソゴドベール広場に戻ってタクシーに乗るつもりだったが、広場では営業中の車が見当たらなかった。近くの道路で暫く待ってみたが、空車はなかなか現れない。旧市街を出て大きな道路で待ってみて捕まえられなかったら、駅まで戻らないとダメなのかな~と思いつつビサグラ新門を出たところで、停車中の空車があったので乗り込む。"Hasta Parador de Toledo, por favor!"(パラドール・デ・トレドまでお願いします)

トレド旧市街

パラドール・デ・トレドは南側の対岸の高台にあるホテルで、テラスからトレドの街並みが見下ろせる場所として知られている。カフェは営業していたので、とりあえずコーヒーを飲んで休憩してから、テラスに出てみるとそこには、カスティーリャ(Castilla)の大地を背に、タホ川が刻む谷に囲まれた崖の上に広がるトレドの街並。石造りの家の赤と褐色の大地に散らばる緑、そして空は雲一つない青。一通り写真を撮った後は、心ゆくまで景色を眺める。といってもそのままそこにずっと居る訳にもいかないので、あまり遅くならないうちに街に戻ることにする。ここからだと道は良く分かるので歩いて帰れないことはないのだけど、あまり無茶をする訳にもいかないので、フロントでタクシーを呼んで貰う。広場の名前が覚えきれず、"Hasta la Plaza..."と行き先を言いよどんでいると、"Plaza de Zocodover?"と運転手が聞き返してくれた。

帰りの列車まではまだ余裕があったので、東や北の展望をもう一度眺めた後、広場近くの菓子屋でマサパン(mazapan)を購入してからバスに乗って駅に戻る。駅舎もよく見るとステンドグラスや塔があり、複雑な装飾の施された重厚な建物で、構内の展示によると築百年を超えているらしい。列車はだいぶ前からホームに停まっていたが、出発時刻の20分くらい前に始まった手荷物検査を受けてから乗車。帰りも逆向きだったけれど、わずか30分なのでそれほど苦にならない。アトーチャ駅で構内の熱帯植物を見学してから、地下鉄で宿に戻ってマサパンを夕食代わりに。