2008/08/19(火)

寝付きが悪くても朝早く目を覚ましたので、そのまま活動開始。市内の遺跡はいずれも8時から開場するので、その時刻に合わせて宿から一番近くにあるローマン・アゴラ(Ρωμαϊκή Αγορά)に向かう。アゴラというのは昔の市場兼集会場であるが、ローマ時代のアゴラはこぢんまりとした遺跡で、風の神の塔(Αίολο Πύργου)の他は、建物の床や柱の基部が残っているだけである。

古代アゴラ

現代の街路に戻り、西に向かって歩いていると、地下鉄1号線が地表に出て掘割のような場所を走っている場面に出くわしたが、線路の両側は古代の遺跡だったりする。続いて訪れたのが古代アゴラ(Αρχαία Αγορά)。こちらは先ほどのアゴラよりもずっと規模が大きく、丘の斜面一帯を占めている。アグリッパの音楽堂(Ωδείο του Αγρίππα)を始めとする多くの建物は基礎を残すのみだが、小高い丘の上に建つヘファイストス神殿(Ναός Ηφαίστου)は、ギリシャで最も保存状態が良い古代建築とのこと。そこに上ると眼下にはオリーブなどの木が疎らに生える古代アゴラが広がり、その向こうにはアテネの市街地が広がっている。一方、神殿と反対側にあるアタロス柱廊博物館(Μουσείο Αρχαίας Αγοράς)は、古代建築を完全に復元したもので、白く並ぶ柱が美しい。主要な遺跡を一通り見学した後、南東側からアゴラを出て斜面を登り続けるが、その辺りにも遺跡が続いていた。

それにしても暑い。気温は出発前の関東地方とそれ程変わらないのだが、日差しがかなり強いように感じる。ヨーロッパの南に位置するといっても、アテネの緯度は仙台と同じくらいのはずなのにね。日本と違い湿度が低いので、汗だくになることはないが、炎天下を歩いていると当然喉が渇く。持ち歩く水は昨日ミュンヘン空港で買ったペットボトルの残りだけだったので、途中で調達するつもりだったのに、朝早かったせいか店が開いていなくて買い損ねていたのである。次の場所で入手出来ればいいのだけれど。

パルテノン神殿

道中に見晴らしの良さそうな丘があったので、観光客用の階段を上ってアテネ市街地の展望を楽しんでから、アクロポリス(Ακρόπολη Αθηνών)の入口へ。ローマン・アゴラで遺跡の共通券を買っておいたので、窓口に並ぶ必要はない。売店を探したらペットボトル水の自動販売機があったので、ありがたやと一本購入。この先のことを考えて二本目も買いたかったのだけれど、それ以上硬貨の持ち合わせがなかったのである。冷たい水で一息ついたところでアクロポリスに入るが、これまでずっと坂道を上って来たのに、さらに坂道が続いている。前門(Προπύλαια)の手前に日陰になっている場所があったので、腰を下ろして休憩しているうちに、急に団体客が多くなってきた。やり過ごしてから進もうと思っていたが、団体客は幾つものグループに分かれて後から後からやって来たので、仕方なくグループの切れ目に入って前門を通り抜けると、古代の街の跡が目の前に広がる。最も大きな建物は言わずと知れたパルテノン神殿(Προπύλαια)で、古代の建築美が真っ青な空の下に聳えている。ただし現在補修工事中で、神殿の一部に足場が組まれ、柱の間からクレーンが顔をだしていたりする(^^; 神殿の横は城壁のようになっていて、アテネ市外の南側からエーゲ海まで見渡すことが出来る。神殿の反対側は入口側ほど保存状態は良くないが、足場はそれ程目立たず、観光客も少なくて順光条件だったので、写真はこちらの方が撮り易かった。アクロポリス最奥の展望台から市街地を眺めた後、エレクティオン(Ερέχθειο)経由で入口に戻ると、観光客で“渋滞”していたので、前門を出るのにかなりの時間を要した。

アクロポリスを出て南側に下りると、売店で飲料水を売っていたので早速2本購入。街中にはキオスクのような売店があちこちにあったので、ここから先の飲物は心配ないようだ。切り立った崖の上に聳え立つアクロポリスを眺めながら通りを歩き、南東側の入口から南斜面に入って、ディオニソス劇場(Θέατρο Διονύσου)とイロド・アティコス音楽堂(Ωδείο Ηρώδου Αττικού )を見学。どちらも古代の劇場であるが、後者は改修されて現在も劇場として使用されているとのこと。プラカ地区(Πλάκα)に戻り、ガイドブック掲載の店を見付けて少し早めの昼食。入ったのは勿論ギリシャ料理の店で、十数種類の料理がテーブルまで運ばれて、その中から好きな物を取るシステムになっていた。選んだのは挽肉をブドウの葉で包んだドルマデス(δολμάδες)と、ライスのトマト詰めに揚げナス。白ワインを注文するのも忘れずに(^o^)

アガメムノンのマスク

食後はアドリアヌス門(Πύλη του Αδριανού)とゼウス神殿(Ναός του Ολυμπίου Διός)を見学した後、ザピオン国際展示場(Ζάππειο Μέγαρο)の前を通って、国立庭園(Εθνικός Κήπος)を通り抜け、大通り沿いに国会議事堂(Βουλή)、アカデミー(Ακαδημία)、アテネ大学(Πανεπιστήμιο Αθηνών)、国立図書館(Εθνική Βιβλιοθήκη)などの建物を眺めながら歩くこと一時間。やっと辿り着いたのが国立考古学博物館(Εθνικό Αρχαιολογικό Μουσείο)である。一階の大部分は彫刻のコレクションで占められ、昔美術の教科書で見たポセイドン(Ποσειδώνας)像もあった。壷や陶器、エジプトなどのコレクションを観賞した後、入口が別となっている先史時代コレクションへ。入ってすぐのところにあるのがミケーネ(Μυκήνες)遺跡から発掘された黄金のマスクで、発見者のシュリーマン(Heinrich Schliemann)がのアガメムノン王のものと主張したため、別人のものと判明した現在でも「アガメムノンのマスク(Η μάσκα του Αγαμέμνονα)」と呼ばれている。金は三千年を経てもその輝きを失っていない~というふうに金が化学的に不活性であることの例として引き合いに出したことはあるが、実物を見ても確かに少しも色褪せていない。

ムサカとウーゾ

博物館を出て、近くのネットカフェに行ってみたら、空き店舗になっていた。時刻は午後3時過ぎ。近くのバス停からスニオン岬(Σούνιο)ゆきのバスが出ているので、元気があれば夕日を見に行くつもりだったが、寝不足で朝からずっと歩き続けると、さすがに眠くて草臥れてしまったので断念。片道2時間だから帰りが遅くなる上に、明日も朝早くからツアーだしね。という訳でオモニア広場(Πλατεία Ομονοίας)から地下鉄に乗って、宿に戻って仮眠を取る。少し涼しくなった頃に外出し、路地を抜けて坂道を上った突き当たりにあるタベルナ(ταβέρνα)へ。屋外のテーブルから坂道を見下ろすと、鉢植えや蔦、そして木立の緑が連なり、遠くにはアテネの市街地が垣間見える。吹き抜ける風は涼しく、暮れ始めた風景を眺めながらゆったりと夕食を取る。注文したのはチーズが載ったグリークサラダと挽肉料理のムサカ(μουσακά)。食前の蒸留酒ウーゾ(ούζο)に、食後のグリーク・コーヒー、とギリシャの夕べを満喫してから宿に戻る。よほど疲れていたのか、今度は騒音を気にせずに熟睡出来た。