2008/08/23(土)

アテネを早い時間に出ていれば、フランクフルトでその日のうちに帰国便に乗継ぐことは可能だったのだが、それだとアテネ発は午前6時となり、宿を出るのが午前3時になってしまう。さすがにそれはヘビィなので、フランクフルト空港の近くに一泊してから、日本に戻る予定にしていた。ら、日本出発の前の週に、ルフトハンザのストの影響で予約していた帰国便がキャンセルになったとの連絡が入り、急遽フランクフルト滞在が一日延びることになったのである。乗継ぎで何度か利用したことがあっても、フランクフルトで途中降機したことはなかったので、これも何かの縁かもと一日観光することになった次第である。とはいえフランクフルトだけでは一日を持て余しそうだったので、午前中は少し遠出をすることにした。

マルクト広場

フランクフルト中央駅の地下ホームから近郊列車に乗って、ライン川(Rhein)の畔にあるマインツ(Mainz)へ。マインツ中央駅から路面電車が走る通りに沿って歩き、案内標識に従って大聖堂(Dom)の前のマルクト広場(Markt)に出ると朝市開催中で、色とりどりの果物やソーセージの屋台などが並んでいた。しかし今日の目的は、広場の先にあるグーテンベルク博物館(Gutenberg Museum)である。活版印刷を実用化したグーテンベルクはマインツの出身で、印刷業を本格的に営んだのも故郷に戻ってからである。博物館には昔の印刷物や印刷機、グーテンベルクの生涯を紹介する展示の他、日中韓の印刷文化の紹介もあった。そして1455年に印刷された「四十二行聖書」の貴重な初版本も展示されていた。博物館を出てライン河畔に出てみたら、空がどんよりと曇っていたせいか、なんだか風景は少し寂しげだった。先ほどよりもさらに賑わっていたマルクト広場を通り抜け、来た時と同じ道で駅に戻る。

ポークグリル

マインツ中央駅から近郊列車に乗ってライン川を渡り、フランクフルト中央駅の2つ先のハウプトヴァッヘ(Hauptwache)で下車。近くにあるガイドブックに載っている店で昼食にしようと探したが、その辺りの区画が丸ごと工事中になっていて、どうやら営業していないようだった。仕方がないので地下鉄に乗って、マイン川(Main)の対岸にある第2候補の「アドルフ・ヴァーグナー(Adolf Wagner)」へ。この辺りはリンゴ酒(Apfelwein)が名物なので、ポークのグリルと一緒に注文したら、グラスになみなみと注がれて出て来た。昼間からこんなに飲んで大丈夫かなとちょっと心配になったが、“ワイン”と呼ばれていてもアルコール度数はブドウ酒よりも低いようだった。

フランクフルト市街

先にマイン川の左岸に来ることになったので、予定を入れ替えてシュテーデル美術館(Städelmuseum)に入場。ドイツは勿論のこと、近隣諸国の絵画を中心とした展示になっているが、ここでの最大の目的はフェルメール(Johannes Vermeer)の「地理学者(De geograaf)」を見ること。“光の画家”と呼ばれるだけあって、効果的に表現された光が印象的である。フランス絵画の部屋では、どこかで見たことがある作風だと思ったら、ドガとモネとルノワールだった。絵を鑑賞しているうちに時間が少々押してきたので、別棟の現代美術はパスしてマイン河畔に出る。午前中は曇りがちだったが、昼からは青空が出て、遊歩道の散策が心地良い。ギリシャから戻ったばかりだと、とても涼しく感じる。マイン川越しに見るフランクフルトの街は、古い建物もある一方で、すぐ近くに高層ビルも多く見られるところが、欧州の他の都市と異なるところか。

レーマー広場

アイゼルナー橋(Eiserner Steg)を渡って、旧市街の中心にあるレーマー広場(Römerberg)に出ると、木組みの館に囲まれた広場は大勢の観光客で賑わっていた。広場に面した旧市庁舎(Römer)のうち、公開されている「皇帝の広間(Kaisersaal)」を見学。神聖ローマ帝国皇帝の戴冠後の祝宴が催された場所で、歴代皇帝の肖像画がずらりと並んでいる。と、窓の外を見ると急に本格的な雨が降っていて、広場にいた人達は雨宿りに退散したようだ。傘を差して近くのゲーテハウス(Goethehaus)まで歩く。その名の通り文豪ゲーテが住んでいた家で、戦争で破壊されたものの建物を復元して疎開していた家具類を戻したので、。書斎は勿論のこと、書庫や応接室、食堂や台所など、当時の様子が忠実に再現されている。

外壁修復中の大聖堂(Dom)の中を見学してから、路面電車沿いに中央駅まで歩く。マインタワー(Main Tower)に上ればフランクフルトの街が一望出来るとのことだったが、雨が上がったとはいえ天気は今ひとつだったので、パスしてそのまま宿に戻って帰り支度。フランクフルトで途中降機となったため、アテネ空港で買ったワインが機内に持ち込めなくなってしまったので、日本から持参したバスタオルでぐるぐる巻きにしてから、大きめのビニール袋の口を閉じる。こうしておけばスーツケースに入れて預けても多分大丈夫だろうし、万一瓶が壊れても荷物全部がワインレッドに染まることはないだろう。以前は町中で購入したワインでさえ持ち込めたのだけどね、とぼやいても仕方のないこと。