2008/09/14(日)

朝6時前に起床。なんだか窓の外では雨のような音がしているけれど、とカーテンを開けると本降りの雨が降っていてびっくり。あれれ今日は降らない予報だったのではなかったっけと思いつつ、どうやら昨夜から今朝に掛けて気圧の谷が通過したらしい。ただ今日の予報は曇り後晴だったので一安心。宿を早めに出て、循環バスで麓のバスターミナルに出て、コンビニで軽食や新聞を調達してから、オロンコ岩の近くにある観光船の切符売り場へ。事前に電話で予約しておいた乗船券を購入してから、待合室で乗船開始となる30分前を待つ。乗船場はオロンコ岩のトンネルを抜けた向こうで、三角岩付近の海岸には柱状節理が広がっていた。そこにキタキツネを見付けたので、望遠で撮影。乗船口には既に行列が出来ていたが、それでもかなり前の方に並ぶことが出来た。空はどんよりとした雲に覆われているが、乗船中に天気は回復してくれるのだろうか。

知床観光船「おーろら号」とその姉妹船は定員400名と少し。どこかで聞いた名前だと思ったら、冬の網走で流氷観光船として活躍している船が、夏場は知床に“出稼ぎ”に来ているのだった。折角前の方に並んだので、乗船開始後は先着順の特別席(追加料金550円)の窓際を確保。進行方向右側だったので、行きはずっと座ったまま海岸の景色を楽しむことが出来るのである。この天気なら外のデッキの方が良かったかもしれないけど、往復で約4時間ともなると指定席の方が落ち着いていられるからね。

ウトロ港を出て、プユニ岬を回ると、船は半島沿いに北上を続ける。昨日崖の上から見たフレペの滝(乙女の涙)を海から眺めると、次の見所は「湯の華の滝」となるが、こちらの別名は“男の涙”というのだとか。浸食されて出来た洞窟「クンネポール」を幾つか過ぎると、岩尾別川の河口辺りで一旦低くなった海岸が再び崖となる。知床五湖の辺りでは、崖の上部が下部よりも出っ張った状態になっている。天気は西から回復する途上にあり、青空が垣間見える海上では時折日も射しているが、知床連山は厚い雲に覆われていて、海岸付近の崖しか見えない。それでも波は穏やかで航海は順調だった。

知床岬

カムイワッカの滝は一連の湯の滝が海に注ぐところで、付近の海面は硫黄によって着色している。硫黄山航路はこの辺りで折返しとなるが、今日乗ったのは知床岬航路なので、そのまま船は進み続ける。本来なら知床岳が見えているはずだが、海岸の奥は相変わらず雲に覆われていて何も見えない。ルシャ湾を過ぎ、タコ岩、カシュニの滝、観音岩と印象的な名所が続き、半島の山が次第に低くなって雲から顔を出し、ようやく青空が見えて来ると知床岬まではもうすぐである。サケ漁の期間中のみ漁師が利用する番屋がこれまでにも点在していたが、岬の先端近くにもあって護岸工事をしていたのには少し驚く。山が途絶えて平坦な台地のみとなると、いよいよ海路でしか来ることが出来ない地の果て、知床岬である。灯台は確認出来たが、さすがにこの天気では国後島までは見えなかった。旋回のため数分間滞在した後、船は帰途に就く。

オシンコシンの滝

帰りも行きと同様、主立った名所に立ち寄ったので、行きによく見ることが出来なかった場所が近付くのを見計らって左舷のデッキに出て、カシュニの滝の上側や知床大橋を撮影する。南側まで来ると半島の上に青空が広がっていたが、知床連山は相変わらず雲の中だった。予定よりも少し遅れてウトロ港に到着し、満員のため下船にも時間が掛かった。バスターミナルまで歩いて、斜里ゆきのバスで約10分のところにあるオシンコシンの滝へ。8年前はバスで素通りしたので、この場所で下車するのは19年ぶりとなる。道路からも見える滝は駐車場のすぐ近くで、幾本もの白い筋が岩肌に広がっている。それを縁取る緑の木々と青い空は記憶にある通りだった。滝の上に展望台があるという話だったが、それらしい道が見つからなかったので直後に来たバスでウトロに引き返す。

バスターミナル近くの店で栗ジャガイモのプリンを食してから宿に戻る。ひと休憩した後、近くにある夕日台まで出掛ける。その名の通り夕日の名所なので、既に多くの観光客が集まっていたが、残念ながら水平線付近に厚い雲があったため、沈む夕日や夕焼けは見ることが出来なかった。食事と温泉の後は「知床☆夜の大自然号」という自然観察ツアーのバスに乗るべく、宿のすぐ前にある専用バス停へ。早くから人が並んでいて、時間が経つに連れ宿から近所から大勢の人が集まり、どうやって乗るのかと思っていたら、4台連ねて来たことを後になって知る。昼間の気温は高めでも、夜になると少し肌寒くなってきたので、バス待ちの間は念のため持参した薄手のセーターを羽織っておく。

ネイチャーガイドと共に夜の動物を探しに行くというツアーで、前回来た時は天気が良くなくて断念していたが、今夜は天気もすっかり回復して、中秋の名月が輝きを放っている。バスはウトロ市街地を出たところで車内灯を消し、懐中電灯を頼りに道端に現れる動物を探す。動物の目が光に反射するから判るのだとか。早速エゾシカがぽつりぽつりと見付かる。昨日から昼間に何頭か見掛けているなと思いつつ、角が立派な牡鹿を近くで見るのは初めてかな。フラッシュ撮影OKだったが、ガラス越しで距離があるとなかなか難しいので、何枚か試した後は見ることに専念。それにしてもこの辺りの鹿は、車や人が数メートルの距離に近付いても逃げようとしないくらい慣れてしまっているようである。鹿を見付けても100メートル以内に近付けなかった釧路湿原との違いを実感。

知床の満月

岩尾別を過ぎ、周囲が開けた開拓地跡でバスは停車して、星空観測(晴天時のみ)のため乗客は車外に出る。近くに町はなく、空気も汚れていない場所なので、普段はさぞや星が綺麗なのだろうけれど、今夜は満月なので天の川は確認出来ず、3等星ぐらいまでしか見ることが出来ない。さすがに夏の大三角形はすぐに判ったけれども。その代わり山頂付近だけ雲に覆われた羅臼岳が、まばゆいばかりの月明かりに照らされるという神秘的な風景が見られた。カメラの感度を上げてセルフタイマーを使って、なんとか撮影出来た模様。帰りも結局エゾシカ以外の動物は見掛けなかったが、鹿や熊の話が面白かったし、月明かりの小遠足も得難い体験だった。10時前に宿に戻り、少し休んでからすぐに寝る。