久しぶりに揺れない寝床で9時間以上も熟睡したが、就寝が早かったので目が覚めたのは午前6時頃。朝食会場は海の見えるレストランで、雲が多めでも空は晴れているけれど、昼間の天気はどうなのだろう。朝食はイギリス式で、ソーセージやベーコン、玉子にマッシュルームやトマトのグリルってスコットランド式と内容はあまり変わらないのかな。テーブルには牛乳がどんと置かれているので、心ゆくまでミルクティーを味わうことが出来て何より(^o^)
バスの本数が限られるので、早めに宿を出て駅前のバスターミナルへ。運転手から一日乗車券(Daily Ticket)を購入し、西に向かうバスの2階最前列に座って、移りゆく景色を楽しむ。ペンザンスの街を出て、半島の先端付近なのにだだっ広く感じる平原を走る。空は晴れて青く、草原の緑と生け垣のエニシダの橙との対比が美しい。それにしても起伏やカーブがあり、自家用車でもすれ違うのがやっとの道を、2階建ての路線バスが通るというのもなかなか凄い。定刻より少し遅れて約1時間でポースカーノ(Porthcurno)に到着。海外のバスは停留所案内がない場合が殆どなので、降りるタイミングを知るのに苦労するが、枝道に入った先で折り返す地点にバス停があるので、降り損ねることはなかった。バス停から目的地まで約400m離れているが、ここから先は大型車が入れない道なので仕方がない。道ばたの花を撮影しながら上り坂を歩き、入江を見下ろす場所を通り過ぎて、看板の案内に従ってミナック・シアター(Minack Theatre)入口に着いたのがちょうどが開場時間だったので、そのまま受付を済ませて入場。
この劇場はロウィーナ・ケイド(Rowena Cade)女史が近所の2人の職人の手を借りながらもほぼ独力で築き上げたもので、翌夏の「テンペスト(The Tempest)」上演のために、1931年から一年がかりで作ったのが最初だったのだとか。戦争による中断を挟んで、1983年に亡くなるまで50年以上の間、増築は続いたのだそうだが、始めた時の年齢が38歳だったというからさらに驚きである。高台にある入口から進んでいくと、眼下にいきなり劇場の全貌が広がる。海を背にした舞台は遙か下方で、石とコンクリートで出来た観客席が急斜面を覆っている。背もたれには演目と上演年が記されている。今某サイトで話題の(?)「リア王(King Lear)」も勿論ある。所々にテラス席があり、斜面の中程には楽屋も作られている。自然の地形を活かした劇場自体が芸術作品だというのにもうなずける。晴れ渡る空と青い海、左手には切り立った崖に囲まれた入江、そして上方は珍しい植物が多い庭園となっていて、どの場所からどちらを向いても印象深い。次のバスまで十分に時間があるので、劇場内をゆっくりと回りながら撮影した後、入口近くの資料館を見学。
この場所を訪れたもう一つの目的が、カフェでコーニッシュ・クリームティー(Cornish cream tea)を注文すること。事前情報通り、窓際の席から眺める入江は絶景である。そしてクリームティーであるが、スコーンには欠かせないクロテッドクリーム(clotted cream)からして、実はコーンウォールの特産品(隣のデヴォンも)だったりする。スコーンは結構柔らかくて、日本で見掛ける物よりはパンに近い食感である。景色を眺めながらお茶しているうちに、なんだか外が薄暗くなってきたような気がする~と思っているうちに大雨となり、屋外からカフェに駆け込む人が続出。それでも食べ終える頃にはすっかり止んで再び晴れていたので、この辺りではにわか雨が多いということなのだろうか。劇場内をもう一回りしてから、バス停まで戻る。近くには電信博物館(Porthcurno Telegraph Museum)というのがあって、第2次世界大戦中に地下に作られた当時としては世界最大の電信基地を公開しているそうだが、時間がないのでパス。上下合わせて1日8本しかないバスを待つが、なかなか来る気配がない。再び通り雨となったが木の下に入れば傘を差す必要はなかった。ようやく大型バスの走行音が聞こえて来た時には、30分近い遅れとなっていた。
終点のランズエンド(Land's End)が本日2番目の目的地。「地の果て」という名前の通り、ブリテン島最西端のペンウィズ半島(Penwith Peninsula)のそのまた先端である。ポルトガルのロカ岬や、アイルランドの首都ダブリンの方が更に西に位置するという話もなきにしもあらずだが、最果ての感慨というのは到達難易度に比例するものである(笑) 迷路やスペクタクルショーといった家族向けアトラクションがあって、共通チケットは10.95ポンドだそうだが、岬周辺を散策するのは無料である。空はすっかり晴れ渡り、切り立った崖に迫る海と青さを競っている。やっぱりこういう景勝地は、晴れている時の眺めは素晴らしい。ずっと「曇り時々雨」の天気予報だったので、どんよりと曇っていることを覚悟していたのだけれど、ここまで天気が良いとは思ってもみなかった。遊歩道を散策した後は、カフェで遅めの昼食。地元名物のコーニッシュ・パスティ(Cornish Pasty)にはバリエーションがあるけれど、基本は牛肉と玉ねぎの入ったパイである。携行食にもなるといっても結構大きくて、両手でも収まらないくらいだったりする。そして付け合わせのチップス(フライドポテト)も大量にある。
帰りのバスが遅れると乗り継ぎが厳しくなるのでちょっと心配だったが、今度はほぼ定刻通りでの運行だった。ペンザンス駅前で2階建てバスに乗り継いでマラザイオン(Marazion)で下車。海岸に出てみると干潮で、セイント・マイケルズ・マウント(Saint Michael's Mount)への道は姿を現していた。渡し船は本土側に乗船場が3ヶ所あって、天候状況等によって場所が変わるそうだが、歩いて島に渡れるなら探す必要はない。干潮時のみ地続きになる島というのはどこかで聞いたような~って早い話が、イギリス版のモン・サン・ミシェルである。てゆーか、フランス語に直訳したら"Mont Saint-Michel"だしね。名前が同じというだけでなく、歴史的にも関連があるらしい。石畳の道をえっちらおっちら歩いて島に渡り、城の入場券を購入。まずは売店の奥で紹介ビデオを観ることになっているのだが、もう閉門時間なので直接城に急ぐように言われる。あれれ、閉まるのはまだ1時間半近く先じゃなかったっけ~と後からサイトで調べたところ、終了時間はガイドブックの記述より30分早い5時になっていた。
とりあえず石畳の坂道を早足で登って城に入場。中は撮影禁止で、城にまつわる絵画や資料を順路に沿って見学。途中で先行の客を追い抜いたところで、安心してペースを少し落とす。屋上からは周囲の景色を見渡すことが出来たが、本土側に一番近い北側のテラスは改装工事中だった。城を出る直前にもう一組追い抜き、元来た道を引き返す。眼下に見える本土への道は、既に海中に没していた。麓に戻ると店は全て閉まっていたので、そのまま乗船場を目指す。潮が満ち始めたところなので、突堤の先端の階段を一番下まで降りてから乗船。ちょうど定員に達したようで、すぐに出航するとわずか10分で対岸の岩場に到着。振り返ると島は完全に海に取り囲まれていた。道が現れれている時と沈んでいる時の割合がどのくらいなのかは分からないけれど、短時間に両方見ることが出来て良かった。慌ただしい滞在となったが、路線バスの本数が少ないので各施設の営業時間内に3ヶ所を回るためには、このスケジュールしかなかったのである。島にはカフェがあり、夏場は庭園も見学可能らしいので、いつかまた機会があれば~って来るのにかなり気合いが要る場所だけどね。
予想よりも早くマラザイオンに戻れたので、一本早いバスに乗れると思って一番近いバス停で待ってみたが、30分過ぎてもまだ来ない。やっと来たかと思えば回送車だし。バス停に時刻表がないどころか系統番号も書いていないので、そもそもここで待っていて大丈夫なのかと不安になり、さっき下車した隣の停留所まで歩いてみる。こちらには時刻表があって確認してみたら、だはは、乗るつもりだったバスは大学休校日のみ運転だった。手元のプリントアウトにもその記号があったのを見落としていただけだった(汗) 気を取り直して当初乗る予定だった40分後のバスを改めて待つと、10分程度の遅れで到着。ペンザンスに戻ったのは午後6時過ぎだったが、遅めの昼食の量が多かったので、帰り道にスーパーでサンドイッチを買って夜は軽めに済ませる。