当初の予定を変更し、時間に余裕のある今日のうちに遠出をすることにして、セーヌ川を渡って近郊列車(RER)の駅へ。窓口で一日乗車券(Mobilis)を買ってから、地下ホームに降りてすぐにやって来たC5系統の2階建て列車に乗車。西に向かって約30分で終点のヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ(Versailles Rive Gauche)駅に到着。矢印に従って歩くとすぐに、記憶にある通りのヴェルサイユ宮殿(Château de Versailles)の荘厳な姿が見えて来る。天気が良く建物に朝日が当たって順光となっているが、西の空に雲が残っていたためどんよりとした雰囲気の写真になってしまった。ミュージアムパスを用意していたので、窓口に並ぶことなく開館直後の宮殿に入れたが、オーディオガイドの方には行列が出来ていた。礼拝堂を見学してから、大居室群(Grand Appartements)へと進む。鏡の回廊(Galerie des Gaces)を始めとする数々の部屋は、修復が済み一段と輝きを増している。それにしても見学者が多く、小さな部屋だと写真を撮るのが大変である。数多くの歴史画が並ぶフランス歴史回廊、王太子の居室群と順に見学を終える頃には正午前になっていた。週末のみ公開の王女達の居室群と、来月まで改修が続くオペラ劇場を見ることは出来なかったが、歩き疲れて空腹になっていたので丁度よかったという話も。
オーディオガイドを返却し、カフェテリアで軽食を食べてから庭園(Jardin)に出る。整然と並ぶ区画には色とりどりの花が咲いていたが、バラは含まれていなかった。庭園はかなり広いので、プチ・トラン(Petit Train)に乗って移動しようと宮殿裏側の乗り場に行ってみたら、やはり行列が出来ていて20分以上待つことになった。列車のように客車を連ねたバスに乗り、ネプチューンの泉(Bassin de Neptune)、大トリアノン宮(Grand Trianon)を経て、小トリアノン宮(Petit Trianon)で下車。ここはマリー・アントワネットが宮廷生活を離れ、お気に入りの取り巻きと共に過ごした場所。例のコミックを読んだ後だと、オスカルがそれを止めようとした場面が思い出されるが、オスカルは架空の人物なのである(^^;
小トリアノン宮の中庭にはバラが咲いていたので、ようやく文字通りの“ベルサイユのバラ”を見付けたことになる。小さな宮殿の内部を見学した後、フランス式庭園、「セビリアの理髪師」を上演した王妃の劇場、見晴し台などを経て広々としたイギリス式庭園に出る。ヒマワリ畑の横を通って池の畔に出ると、対岸に田舎風の建物が並んでいるのが見える。ここがマリー・アントワネットの田園趣味を具現した王妃の村里(Le Hameau)で、水車小屋や農場、ブドウ畑まである。帰りは愛人との逢瀬の場所となった愛の神殿(Temple de l'Amour)を経て小トリアノン宮に戻り、隣の大トリアノン宮まで歩く。こちらはルイ14世が愛人と過ごした場所で、イタリア風の邸宅となっている。青い花が咲く庭園も見事だったが、既に歩き疲れていたので入口だけに留めておく。
大トリアノン宮から大運河(Grand Canal)までプチ・トランに乗ることも出来たのだけど、大した距離ではないのでそのまま歩く。前回来た時は、ここから宮殿までの間の迷路のような庭園を一通り散策したのだけど、今回は宮殿とトリアノンをしっかり見学したので、ほぼ真っ直ぐ歩いて宮殿に戻る。途中のアポロンの泉(Bassin d'Apollon)とラトナの泉(Bassin de Latone)は、どちらも水が出ていなかった。再びカフェテリアに入ってお茶してから、6時間滞在した宮殿を後にする。帰り際は西の空も晴れていたので宮殿正面の写真を撮り直したが、道路を渡って全景を撮ろうとしたところで大型バスが真正面に停まってしまった。そのまま団体客が出て来るのを待っているようだったので、諦めて近郊列車の駅に向かう。
パリ市内に戻って、宿の近くのワインバー「レクリューズ(L'Ecluse)」へ。ここは“ボルドー愛好家のために(Pour l'amatuer de Bordeaux)”という謳い文句の通り、ボルドーの品揃えが豊富なのである。なにせグラスワインのリストを見ると、マルゴー、ポイヤック、サンジュリアンといった各アペラシオンにつき2~3種類ずつ選べるようになっているのである。どうやって選ぼうかなとリストを眺めていると、以前セカンドラベルを飲んで気に入ったメドック格付5級のChâteau Belgrave 2001(AOCオーメドック)があったので、迷わずそれの愛好家サイズ(200ml)を注文。料理の方も日本語メニューにアペラシオン別のアリアージュが記載されていたので、それに従って子羊のグリルのラタトゥーユ添えを選択。香り高いワインはタンニンが程よく溶け込み、料理との愛称も良く、とても素晴らしい夕食となった。