2009/10/31(土)

今朝の集合時間は遅めだったので、明日の集合場所を先に確認しておく。泊まっているホテルの近くでも途中に大通りや立体交差があるので、徒歩だと大回りさせられるのではないかと心配していたが、ほぼ最短ルートで歩けることが判明。ちょうど香港公園(Hong Kong Park)に向かうエスカレーターのすぐ近くだったので、折角なのだからと上ってみると着いたのは公園の端。中を少し歩いて階段を登ると、生い茂る亜熱帯植物の向こうに超高層ビルが立ち並ぶという、独特の風景が広がる。残念ながら温室が開く時間を待っていられなかったので、そのまますぐに引き返して今朝の集合場所に向かう。

予定よりも少し早めに来たバスに乗って、香港島の一日観光が始まる。最初に訪れたのが、シェンワン(上環/Sheung Wan)地区にある文武廟(Man Mo Miu)。その名の通り"文"を司る文昌帝と"武"を司る関帝を祀った廟で、現代では学業成就と商売繁盛を願うのだとか。小さな廟内には大きな渦巻き状の線香が幾つも、天井から吊り下がっている。香港島は海側からオフィス街、繁華街、アパート街(いずれも高層建築)の順に細長く連なっているが、特にこの辺りの繁華街は昔ながらの雰囲気が色濃く残っているとのこと。印象的な街並みだったが、ツアーだとどうしても滞在時間が短くなってしまうので、交通が便利なこの辺りは後日改めて来ることにしよう。

太平山より

続いてジョンワン(中環/Central)の山側にあるピークトラム(山頂纜車/Peak Tram)乗り場に。それ程混雑はしていなかったとはいえ、ツアーだと優先乗車出来るのが有難い。市街地とビクトリアピーク(太平山/Victoria Peak)を結ぶケーブルカーが開業したのは、今から120年以上も昔のこと。暑さを避けて山の上に住んでいた英国人が、駕籠で移動するのは不便だからと造ったのだとか。通常ケーブルカーは車内に傾斜を付けているので横から見ると平行四辺形になっているが、ここでは車内に傾斜がないので長方形となっている。そのため勾配のきつい場所では、体が座席に重力で斜め後ろ方向に押しつけられるのをはっきりと感じる。途中駅で乗降客があって停車すると、なんだかジェットコースターが途中で止まったような状態となり、ちょいとスリリング。進行方向右側の窓から眼下に街並みが見られるようになると、終点の山頂駅に到着。この辺りの軌道には殆ど傾斜が付いていないので、このような車両構造となったのだろう。山上(厳密に言うと山頂ではない)には不思議な形をしたピークタワー(凌霄閣/Peak Tower)があって、屋上からは360度の展望が楽しめるそうだが、ツアーではそこまで上る時間がないので、駅から少し離れた展望台「獅子亭」に行って、ビクトリアハーバーを挟んでビルの高さを競い合う市街地を見下ろす。山が海に迫っていて、高層ビルが神戸よりもずっと密集している。昨日は少し霞んでいたが、今日は晴れて視界も良好。写真を一通り撮っても集合時間まで少し余裕があったので、駅前広場にあるテラスから島の反対側の景色も眺める。

香港仔

迎えのバスに乗って北側の景色を垣間見ながら山道を下り、島の南側に出てヒョンゴンチャイ(香港仔/Aberdeen)に向かう。ここが「香港」という地名の発祥なのだそうで、香木を運び出す港だったのだとか。英語の"Hong Kong"は“ヒョンゴン”という広東語発音に由来し、北京語発音では“シャンガン”となるそうな。船着き場からサンパン(舢舨/Sampan)と呼ばれるエンジン付きの平底船に乗って、巨大な水上レストラン“珍寶王國(Jumbo Kingdom)”の浮かぶ湾内を遊覧。昔は香港全体で十万人以上いたという水上居民の多くは陸上に移り、香港仔にも高層マンションが建ち並んでいるが、湾内には今でも小さな船が多く浮かんでいた。15分程で船着き場に戻り、山岳トンネルと海底トンネルを通って、九龍に渡ったところで飲茶の昼食。

午後は海底トンネルを通って、灣仔の金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)で見学停車。香港返還記念の黄金のバウヒニア(洋紫荊/Bauhinia)像がある広場で、今朝の集合場所からもかなり近かったりする。バウヒニアは香港を象徴する花で、特別区の旗や硬貨にも描かれている。ぱっと見はツツジのような雰囲気だが、マメ科である。ちょうど今が開花の季節で、あちこちの街路樹に濃桃色の花を見掛けるが、高い位置に咲いているためなかなか撮影は難しい。広場を取り囲むシーサイド・プロムナードからは、対岸の九龍の高層ビル群を見渡すことが出来る。少し走って灣仔・中環方面の景色を撮影してからバスに戻る。

赤柱市場

再び香港島の南側に出て、レパルス・ベイ(淺水灣/Repulse Bay)へ。蒸し暑くて雨が多い夏が終わり香港は過ごしやすい季節となっているが、天気は快晴で気温は30℃近くあるので外を歩いていると結構暑い。砂浜の東端にある天后廟で色鮮やかな建物や像を見学してから、最終目的地のスタンレー(赤柱/Stanley)に移動。買い物のため1時間の自由時間となったが特に買う予定の物はないので、とりあえず飲食店が並ぶ海沿いの道を歩いて、マレーハウス(美利樓/Murray House)まで行ってみる。元は市街地にあったビクトリア様式の建物を移築したもので、現在は博物館と飲食店となっている。近くにあった波止場やショッピングモールから景色を眺めた後、スタンレー・マーケット(赤柱市場/Stanley Market)に戻って、両側に店が並ぶ狭い道を歩く。最後は少し時間が余ったので、集合時間までコーヒー店で休憩。

自動扶梯系統

ツアーは中環のフェリーターミナルで解散となったので、繁華街まで歩いてヒルサイド・エスカレーター(中環至半山自動扶梯系統/Central-Mid-levels escalators)に乗る。全長800メートルで世界最長のエスカレーターと言われているが、単一のエスカレーターではなく20のエスカレーターと動く歩道および階段を組み合わせて、135メートルの高さを上るようになっている。ごく一部を除いて全区間一方通行で、下り専用となる朝ラッシュ時以外は深夜まで上り専用である。高層ビルや高層アパートの間を縫うように続き、所狭しと店が並ぶ繁華街や各国料理店、モスク等を見ながら全行程は30分位。終点に見所がある訳ではないのですぐに引き返したが、下りはずっと階段ということになる。麓まで辿り着いたところで、香港名物のトラム(香港電車/Hong Kong Tramways)に乗車。イギリスの影響下にあった香港では2階建てバスが沢山走っているが、路面電車も全て2階建てである。ほぼ全線にわたって地下鉄(MTR)と並走しているが、短距離移動は気軽に乗り降り出来るトラムの方が便利である。運賃は1乗車2ドル(約24円)均一というから破格の安さである。車内アナウンスはなくても全ての停留所に必ず停車するし、停留所の間隔は短く降り間違えたとしても大したことはなので、安心して2階席に座って流れ去る景色を楽しむ。

灣仔で下車して、ガイドブックに載っていた粥店で夕食を取ってから宿に戻る。部屋のインターネットは有料だったけれど、1時間400ドルのコースで簡単に情報収集。4日前に発生した南シナ海の台風は、勢力を弱めながら真西のベトナム方面に進むようだ。