2010/09/24(金)

明け方の風雨で一旦目を覚ます。気圧の谷の通過に伴い少し降ったようだが、朝にはもう止んでいた。今日はツアーを申し込んでおいたので、早めに朝食を済ませて迎えの車を待つ。まずは事務所に立ち寄って、書類に記入してから長靴に履き替える。知床自然センター経由で知床横断道路に入り、知床峠を越える。天気は回復しつつあったが、羅臼岳は上の方が雲に覆われていて、その雲の流れがかなり速い。羅臼湖入口で車を降りて、トレッキングの開始となる。付近は駐車禁止となっているので、帰りの時間に合わせて迎えの車が来る手はずになっている。

ゴゼンタチバナ

入口で登山届を出してから、山道を上り始める。入口から羅臼湖までの距離は片道約3キロで、道中3回の上り下りがあり、高低差は100メートル近く。晴れていてもぬかるんでいる場所が多く、トレッキングには長靴が必須である。中には20センチを越す深みもあるが、実際に足を踏み入れてみないことには泥の深さが分からないので、足で探りながら慎重に進まねばならない所もある。水溜まりや泥濘を避けて歩くと、登山道を広げて植生を破壊することになるので、積極的に踏み込むべし。また、木道もところどころ痛んでいるので、赤いテープが貼ってある場所は避けねばならない。この辺りは標高700メートルで森林限界を越えているため、ハイマツ林が優勢となる。高山植物の花の季節は既に終わっているが、ゴゼンタチバナ、ツルコケモモやシラタマノキなどの実が見られる。知床地方も昨日から急に冷え込んでいて、山の上だと7℃くらいのようだが、風が強いので体感気温はさらに下がる。

羅臼湖

登山道は5つの沼を経由して羅臼湖まで続いている。沼は通し番号で呼ばれ、道路側の「一の沼」と「二の沼」は雨水や雪解け水が溜まって出来ているため、降水量の少ない年には干上がることもあるのだとか。それ以外の沼は地下水が成因となっているので、比較的変動が少ないらしい。「三の沼」は天気が良ければ水面に羅臼岳が写るので、時として“羅臼湖”の写真として使われるのだとか。今日の羅臼岳は頂上付近が雲に隠れてしまっているし、それ以前に風が強くて水面は波立っている。湿原を抜けて「四の沼」「五の沼」を過ぎると、知西別岳に抱かれた知床最大の湖、羅臼湖が眼前に広がる。晴れていれば綺麗な景色なのだろうけど、空はどんよりと雲に覆われていて、湖面も強風でさざ波だっている。ここが主目的地なのだけど、じっとしていると寒いので、数分間の滞在しただけで引き返す。帰りも同じ道を逆向きに辿ることになるが、「三の沼」の向こうの羅臼岳は相変わらず雲の中だった。

横断道路に出て、暫く待って迎えの車に乗り込む。途中、知床峠で小休憩を取ったが、辺りは真っ白になっていた。事務所に戻って靴を履き替え、ウトロのバスターミナルで降ろして貰う。この後、知床岬ゆきのクルーズに乗り継ぐことも可能だったが、海が荒れているため数日前から欠航が続いているらしい。来年から自由に散策出来なくなる知床五湖に、今のうちに再訪しておくというのも考えたけど、今日の天気だと景色も今ひとつだろうから止めておく。という訳で慌てて移動する必要がなくなったので、ジャガイモ料理が名物の店に入って遅めの昼食。ジャガイモを添えたカレーと、ジャガイモを使ったプリンを注文。

夕陽台より

そのまま宿に帰るには早い時間だったので、道の駅「うとろ・シリエトク」の隣にある知床世界遺産センターを見学。一昨年道の駅に来た時には気付かなかったなぁと思えば、去年の春に出来たばかりだったことを後から知る。そういえばこの近くを流れる川でも、サケの遡上が見られるという話だったっけ~ということでペレケ川に架かる橋から覗いてみたら沢山の魚が泳いでいたので、川岸側に回ったりバスターミナル近くの斜面を降りたりして撮影。持参した円偏光フィルを使うと、川面の反射光を抑えられるようである。帰りは宿まで坂道を上ることになるが、道端に咲くキツリフネやトリカブトなどの花が目を楽しませてくれる。宿の部屋でネットサーフィンしながら休憩した後、窓から北西の空を確認すると、今日は水平線近くに雲が殆どなかったので、夕陽台まで出向いて日没を待つ。赤くなった太陽は帯状の雲に一時的に隠れたものの、今度こそオンロコ岩の向こうに沈み切るまで見ることが出来た。昼は遅めにしっかり食べたので、今日も夜はパンで軽く済ませた後、明日に備えて早めに就寝。