2011/05/04(水)

事前に一日ツアーを申し込んでおいたので、大劇場(Grand Théâtre)の近くの観光案内所(Office de Tourisme de Bordeaux)に行って、バウチャーをチケットに引き替える。開始時刻にやって来たバスに乗り、ガロンヌ河畔で下車して、ボルドーの街の解説を聞く。ガイドは英語とフランス語だけど、フランス語とフランス語訛りの英語を頻繁に切り替えるので、注意して聞いていないといつ英語を話しているのか分からなくなってしまうこともある。ボルドー市街は、「月の港ボルドー(Bordeaux, Port de la Lune)」として世界遺産に登録されているので、なんとなく月夜が美しい港町という意味かなと思っていたら、ガロンヌ川が三日月形に湾曲する場所に港があることに因む街の別名らしい。大型船は下流の新港を使うようになったため、現在市街地には観光船の発着場が残るだけとのこと。なおボルドー市は、フランス国内では人口5番目の街である。

ワイン博物館

シャルトロン地区(Quartier des Chartrons)を歩いてワイン博物館(Musée du Vin et du Négoce de Bordeaux)に入る。この辺りはネゴシアン(Négociant)と呼ばれるワイン商の邸宅が集まっていた場所で、博物館の建物もその一つだったもの。吹き抜けの階段室の床には雨水を集める樋があり、地下のワインセラーに湿分を供給していたのだとか。セラーを利用した展示室には、ボルドーワインの歴史を解説したパネルや、ワイン製造に関わる道具類等が展示されている。世界的なワイン産地と知られるボルドーであるが、ブドウ栽培に適した気候風土もさることながら、ボルドーを中心とするアキテーヌ(Aquitaine)地方が3世紀の間イギリス領だった関係で、ボルドーワインがイギリスを始めとするヨーロッパ諸国で盛んに飲まれていたという歴史的経緯も発展に寄与したようである。イギリスではボルドーワインのことを"claret"と呼ぶが、これは"clear"という語から派生したとのこと。もしかして当時は濁ったワインが多かったということなのだろうか。ずらりと並ぶボトル見本の中に、Château Brane Cantenacの金色のエチケット(ラベル)を見付けて、思わずニヤリ。見学の後は勿論ワインの試飲。一つ目はKressmann Monopole Blanc(ACボルドー)の2010。ボルドーワインといえば赤が主流であるが、生産高の1割強は白ワインである。品種はソービニオン・ブラン100%。二つ目はChâteau Matibon(ACリストラック・メドック)の2007。リストラック・メドックを飲むのは初めてであるが、メドック地区でもメルロー比率が高いようである。

山羊の温製チーズ

昔ながらの建物が残る地区やマロニエ並木を歩き、公共庭園(Jardin Publique)やグランゾム・ギャラリー(Galerie des Grands Hommes)を経て、昼食会場のレストランへ。チーズが売りの店なので、前菜は山羊の温製チーズで、主菜のアヒルのグリルとデザートの間にも各種チーズが出て来る。昼食込みのツアーでも飲物は別料金になっていることが多いが、各テーブルにChâteau Bellevue(ACコート・ド・カスティヨン)の2006が一本ずつ用意されていて、なんとおかわりも可能である。それも地区名AOC(原産地統制呼称/Appellation d'Origine Contrôlée)ワインなのだから、さすがはボルドーである。コート・ド・カスティヨン(Côte de Castillon)はサンテミリオン(Saint-Emillion)の東側にあり、右岸地区なのでやはりメルローが主体である。いくらでも飲みたくなるところだけど、午前中だけでなく午後からも試飲があるので、あまり飲み過ぎないように注意しないと。店の地下にセラーがあるとのことだったので見に行ったら、ワインセラーではなくてチーズセラーだった。

ブドウ畑

午後からワイナリー見学の半日ツアーの参加者と合流。訪問する地区は曜日ごとに決まっていて、水曜日の今日はサンテミリオンである。ボルドー市内を流れるガロンヌ川はドルドーニュ川(Drodogne)と合流し、ジロンド川(Grronde)となって大西洋(Océan Atlantique)に注いでいるが、ボルドーワインの生産地はこれらの川の左岸と右岸に大別される。サンテミリオンは右岸を代表する地区で、ボルドー市内から東にバスで約1時間。車内ではすぐに眠ってしまい、気が付けば一面のブドウ畑の中を走っていて、程なくシャトー・ラヴァラッド(Château Lavallade)に到着。シャトーとは本来「城」を意味する言葉であるが、ここボルドーではワイン醸造所のことを指し、建物は文字通り城館のこともあれば小さな家くらいのこともある。バスを降りてワイン醸造設備を見学。今の季節はステンレスのタンクは空になっているが、ブドウ選別機やフレンチオークの樽などを見ながら、ブドウ収穫から始まる一連の作業の説明を聞く。その後の試飲は、シャトー名を冠したChâteau Lavallade(ACサンテミリオン・グランクリュ)の2007の他、ロゼを含む3種類。サンテミリオン地区は土壌が石灰質なので、ボルドーの代表的なブドウ品種であるカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)の栽培には適さず、メルロー(Merlot)やカベルネ・フラン(Cabernet Franc)が主体となるので、ワインは芳醇でまろやかなのが特徴となっている。また「特級畑」を意味するグラン・クリュ(Grand Cru)は、サンテミリオンの場合はAOCの一部となっている。

サンテミリオン

半日ツアーでは他の地区だと2カ所のシャトーを見学することになっているが、サンテミリオンの日はシャトーは1カ所にして、世界遺産「サンテミリオン管轄区(Juridiction de Saint-Emilion)」に登録されている町を見学することになっている。駐車場でバスを降りて石畳の坂道を上り、モノリス教会(Eglise Monolith)の鐘塔前の広場からサンテミリオンの街並やその向こうのブドウ畑を眺める。世界遺産にはサンテミリオン近郊の町や村だけでなく、ブドウ畑も登録されているそうである。そこから石畳で滑り易い坂道を下って、モノリス教会の中(個人見学不可)に入る。モノリスの名が示すように一枚板を刳り貫いて作った中世の教会で、内部は荘厳な空間となっているが、崩落を防ぐため一部補強が施されていた。集合時間まで町の中を散策してから、バスでボルドー市内に戻る。午後から曇りになったものの、雨が降ることはなかった。今日は寝不足の上、ツアー中にワインを沢山飲んだので、夜は携行食で済ませる。