2012/10/07(日)

早めに宿を出て、荷物を駅のロッカーに預けてから、市内観光開始。まずは特に常時開園の新宮(丹鶴)城趾から。石段を登って松ノ丸から鐘ノ丸に出ても、手前の木々で遮られて眺めは今ひとつだったが、さらに本丸まで進むと見晴らしは良くなる。建物は残されていないので、石積みの上から景色を眺めただけで麓に降りる。城門前の道はそのまま参道となり、熊野速玉大社に続いている。熊野三山の一つで、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部となっている。境内は静かで、朱塗りの建物が青空に映える。当初は昨夕のうちに大社にだけ訪れてから、今朝はすぐに新宮を発つつもりでいたのだけれど、調べてみると夕方までに途中下車を繰り返すのは無理そうだったので、意外と見所が多い新宮市内を回ることにしたのである。

神倉神社

という訳で現在は国道となっている熊野街道の裏道を歩いて、神倉神社に向かう。こちらは旧街道といった風情で、古い建物が所々残っている。小さな川を渡ると境内となり、大きな鳥居の間から急峻な石段が続いている。この石段が半端なくキツい。息を切らしながら538段を登った先にあるのが、コトビキ岩と拝殿。ここから海に向かって広がる市街地を眺めることが出来る。歴史的にはこちらの方が古いらしく、神倉神社に対して熊野速玉大社を「新宮」呼んだことが地名の由来なのだとか。山中にある熊野本宮大社に対する「新宮」だとばかり思っていた。上りは勢いがあればいいけれど、石段があまりに急なので、下りは慎重にならざるを得ない。手摺があれば思わず掴まりたくなるところだが、何もなしに段付きの崖をちょぼちょぼと降りることになる。ようやく鳥居まで辿り着いたところで一安心。

裁判所前から駅に向かう途中で、路地に入って「浮島の森」へ。市街地のど真ん中に沼があって、その中に日本最大級の浮き島があるというから驚きである。泥炭で出来た浮島の植物群落は、天然記念物に指定されていて、南方系と北方系の植物が同居しているのだとか。周囲の遊歩道から浮橋を渡って島に入り、木立の中を横切ってから反対側に出る。沼はかなり深いらしいが、四方を住宅地に囲まれているので、生態系を保つのも難しそうである。なお、この辺りには「浮島○○」という店の名が目立ち、やたらと浮島押しだと思っていたら、地名も「浮島」となっていることが判明。列車が来るまで時間に余裕があったので、駅の反対側にある徐福公園にも訪れる。秦の始皇帝の命により不老不死の霊薬を求めて日本にやって来たとされる人物に因み、中国式庭園となっている。縁の場所は全国各地にあるようだが、ここに定住して知識を伝授したという伝説があるらしい。園内には徐福の墓や石像もある。

新宮駅に戻って荷物を取り出し、改札に向かうと特急「南紀」は十数分の遅れというアナウンス。なんでも鈴鹿サーキットのイベントの影響らしい。次の目的地での乗り換えは定刻でも11分。途中で遅れを取り戻すか、あるいはバスが待っていてくれないだろうか、という淡い期待は見事に外れ、15分遅れで終点の紀伊勝浦に到着した時には、バスは出た後だった。次のバスまで1時間以上も待ちぼうけになるのは、あまりにも時間が勿体なかったので、ロッカーに荷物を預けてからタクシーで移動。那智駅近くから那智川沿いに山間部に入り、大門坂で下車するとちょうど乗り損ねたバスに追い付くことになった。

那智の滝

県道から分かれる坂道を上り始め、大門坂茶屋を過ぎて夫婦杉の間を抜けると、杉林の中に延々と石段が続く。そういえば今日は朝からずっと、石段ばかり登っているような気がしないでもない。坂の終点である大門跡を経由して、表参道という名の石段を登り続け、大きな鳥居を2つ潜ると熊野那智大社に辿り着く。こちらも勿論世界遺産の一部である。本殿脇には八咫烏(やたがらす)の像が。これで20年前の本宮、昨日の新宮に続いて、熊野三山コンプリートということになる。隣の那智山青岸渡寺(西国一番札所)は境内同士が繋がっているようだったが、一旦石段を下りて仁王門に向かって上り直す。本堂から先に続く坂を下っていくと、滝を背景にした三重塔が見えて来る。実に絵になる組み合わせだが、拝観料を払って塔の中に入ると、エレベーターに乗るよう案内された。実は近代建築だったのね。最上段は金網で覆われていたが、さすがに滝の方角だけ切り取ってあった。さらに坂道を下り続け、バス停の先にある鳥居から石段を下ると、飛瀧神社に行き着く。その名の通り那智の滝の麓にあり、有料ゾーンに入ると滝を間近から見上げることが出来る。133mの落差は、一段の滝としては国内一位で、文句なしの名瀑である。華厳の滝、袋田の滝と共に日本三大瀑布に数えられるが、こちらも今日でコンプリート。

次のバスまで時間があったので、確実に座るために始発バス停まで歩く。どの辺にあるのかなと思っていたら、表参道の石段の近くだった。後から調べたら、大門跡から表参道に向かう途中で回り込んだ高台が、実はバス停が面した駐車場だったことを知る。つづら折れの県道を下り、那智川沿いに進んで那智駅前経由で終点の紀伊勝浦駅まで乗り通す。所定でも乗継ぎに7分しかないところに、バスが数分送れとなり焦ったが、駅に着いて荷物を取り出し、特急「くろしお」に乗ることが出来た。太地、古座と停車し、本州最南端の串本到着前に橋杭岩を車窓から見る。出来れば串本で下車して潮岬にも訪れたかったのだけど、駅からバス移動となる上、大島まで足を伸ばすとなると半日は必要である。今回はさすがに無理だったので、そのまま列車に乗り続ける。約1時間半で、今日の最終目的地である白浜に到着。

千畳敷の夕日

駅前の窓口で2日用のフリー乗車券を購入してから、温泉街に向かうバスに乗る。終点の手前の千畳口で下車し、近くの宿にチェックイン。日没時間が近かったので、すぐに外出して海岸の千畳敷に出ると、太陽はちょうど西に広がる海の近くまで来ていた。夕日の名所なので岩場では多くの人が待ち構えている。水平線近くには雲があったので、隠れる直前に撮影してから引き上げる。昼は菓子パン一つでかなり空腹になっていたので、コンビニに寄って軽食を調達して速攻で消費。宿泊サービスの露天風呂付きの温泉を利用してから、宿に戻って夕食のステーキ膳。ネットなしという事前情報と異なり、ロビー付近では無線LANが使えたけれど、途中から繋がらなくなったのでさっさと就寝。