2014/08/16(土)

マウリッツハイス

デン・ハーグに来た一番の目的は、今年6月に改修工事が終わったばかりのマウリッツハイス(Mauritshuis)、ということでビネンホフの隣にある美術館に開館15分前に行ってみると、既に数名の列が出来ていた。そのうち日本人団体なども加わって、百名近く待っている状況で開館時間を迎える。オンラインチケットを用意していたので、入館後は地下受付で荷物を預けてすぐに地上階の展示室へ。何はさておき、上の階にあるフェルメールの展示室に直行。ここにあるのは、既に日本で見たことがある「真珠の耳飾りの少女」「ディアナとニンフたち」と、今回が初めてとなる「デルフトの眺望」の3作品。数少ないフェルメール作品の中でも一番人気と言われる「真珠の耳飾りの少女」(或いは「青いターバンの少女」)は、日本の展覧会では絵の前が大混雑となり、夜間鑑賞の特別券を入手してようやくゆっくり鑑賞出来たのだけど、ここでは最初の数分間“独り占め”状態となった。フェルメールには珍しい風景画である「デルフトの眺望」や、今回で5度目となる「ディアナとニンフたち」をとくと鑑賞した後、館内の他の部屋を一通り見て回る。改修工事中の来日展で見た覚えのある作品も幾つかある。途中で何度かフェルメールの部屋に戻ってみると、だいぶ混み合っていて団体客で入室制限している時もあったけど、基本的には数分待てば絵の前に行ける状態だったので、来日展に比べるとはるかにゆったりとしている。

本館の鑑賞を終えて、館内のブラッスリーで早めの昼食を取ってから、地下連絡通路で繋がった別館の特別展も見学。勢いで共通券を買ったので、約300メートル離れたウィレム5世のギャラリー(Galerij Prins Willem V)も訪れる。壁にぎっしりと絵画が並ぶ細長い部屋をざっと見て回った後は、すぐ近くの電停から1号系統の路面電車に乗車。 トラム車両の運転台は先頭車両のみで、座席も全て前方向に固定。つまりは終点で必ず方向転換しているということになる。トラムは市街地を抜け、運河に沿って走ったりしながら南に向かう。途中で跳ね橋が降りるのを待ったが、軌道と一緒に架線も持ち上がってるってことだよね。約30分でデルフトに到着し、鉄道の駅前で下車。路面電車は列車よりも時間が掛かるけれど、街の中心同士を結んでいて、気軽に乗れるのが有難い。

デルフトの眺望

改装工事中の駅前から少し歩いて、ザイドコルク(Zuidkolk)という三角形の池の畔に向かう。フェルメールの「デルフトの眺望」は、この池の南側からの景色を描いた、ということを事前にネットで調べておいたのである。絵は午前中に見たばかりなので、岸の形や遠くに見える新教会(Nieuwe Kerk)などに面影を見付けることが出来るが、さすがに350年も経っていると、手前の建物などは全く変わってしまっている。それに絵も実際の景色そのままという訳でもないらしい。街並が絵と同じように、青空を背景にした逆光だったら最高だったのだけど、そう簡単に都合良い条件になるはずもなく、今の背景は曇り空。

新教会より

デルフトの旧市街に出て、まず旧教会(Oude Kerk)を訪れる。教会内の床面にはフェルメールの墓標が2カ所あるが、実際の埋葬場所は不明らしい。以前からある小さな墓標に加え、最近もっと大きな墓標を少し離れた場所に設置したようである。また、壁面にはフェルメールと同時代の“微生物学の父”と呼ばれるレーウェンフック(Leeuwenhoek)の墓もある。フェルメールの「天文学者」「地理学者」のモデルと言われていて、フェルメールの遺産管財人にもなったとのこと。旧教会を出て、大勢の観光客で賑わう運河沿いの露店街を経て、新教会へ。こちらではまず鐘楼に登って、赤瓦が整然と並ぶ街並を見下ろす。塔から降りて教会内部も見学してから、すぐ近くのフェルメール・センター(Vermeer Centrum Delft) へ。デルフトはフェルメールが生涯を過ごした街だが、作品は現在一点も残されていな い。その代わり絵画ギルドがあった場所に、全作品のパネルを並べて展示する場所としてフェルメール・センター。日本で開催された「フェルメール 光の王国展」の額縁に入った“リクリエイト”とは異なり、実物大のパネル写真のみだが、全作品がコの字型に並んでいるのは壮観である。それぞれの絵の前で、観に行った時のことを思い出したり。他のフロアの解説展示は、基本的に同じものが「光の王国展」で紹介されていた。

デルフト東門

デルフト中心部の施設を巡り終え、運河沿いに歩いて旧市街の端となる東門(Oostport)と跳ね橋を見に行った後は、プリンセンホフ(Princenhof)近くの電停から路面電車に乗ってデン・ハーグに戻る。1号系統の反対側の終点はスヘーフェニンゲン(Scheveningen)という海岸保養地で、日本では“スケベニンゲン”という読みで一部には有名だが、響きの面白さだけで行く程の元気は残っていなかった。デン・ハーグ中央駅に立ち寄って明日の切符を買おうとしたら、当日分のみの販売とのことだったので、明朝は6時から開いていることだけ確認してから、構内の売店で軽食を調達して宿に戻る。