2018/08/05(日)

次の行き先の天気予報がサイトによって違っていたけど、地元のサイトによると少なくとも今日の天気は良さそうだったので、早めに移動しておこうということで、宿を早めにチェックアウトしてコルナヴァン駅を発つ。スイスでは一部の列車(氷河急行や国際列車)以外は指定不要で、乗客も指定を取らないことが殆どのようなので、その日の都合で乗る列車を決めても問題はない。レマン湖岸を走る列車は、昨日訪れたローザンヌを過ぎ、モントルー(Montreux)の少し先で湖岸の城の間近を通る。レマン湖を離れた後は、ローヌ川上流に沿って進んで、マルティニー(Martigny)で方向を転じる。ドイツ語圏に入ると、車内アナウンスの順序が変わり、終点の一つ手前のフィスプ(Visp)で下車。途中、工事の影響で徐行や待合せがあった上、2箇所で臨時停車したため10分近く遅れていたが、乗り継ぎには問題なかった。

登山列車

地下道を通って隣のホームから、マッターホルン・ゴッダルト鉄道(Matterhorn Gotthard Bahn)に乗り換える。軌間が1メートル丁度の登山鉄道で、勾配がきついところではラックレールを使いながら、谷間をどんどん登ってゆく。両側に聳える山はさらに険しくなり、頂上付近の氷河から水が流れ落ちる轟音が響き渡る。1時間と少しで終点のツェルマット(Zermatt)に到着し、駅から少し歩いてホテルに向かう。環境保護のためガソリン自動車の乗り入れは禁止されているが、小型の電気自動車が細い道を走り回っているので、歩くのには注意しなければならない。チェックインには早い時間だったので、フロントに荷物を預けるつもりだったけど、部屋が空いていたのでチェックインを済ませる。今のところは晴れていて、ベランダからマッターホルン(Matterhorn)が見えていたので、荷物を置いたら一息つく間もなく外出。標高1,600メートルともなると、さすがに涼しい。

とりあえずマッターホルンを眺める名所となっている教会通り(Kirchstrasse)の橋に行ってみたら、頂上が微妙に雲に隠れている感じ。橋の下を流れるマッター・フィスパ川(Matter Vispa)はかなりの水量と流速だが、乳白色になっているのは氷河由来だからなのだとか。上流に向かってさらに歩いて、ツェルマットの端の方にあるゴンドラ乗り場に向かう。窓口で終点までの往復乗車券を買ってから、次々とやって来る小型ゴンドラの一つに乗り込む。遠ざかる谷間の街並みを眺めながら急勾配を登り、最初の駅であるフーリ(Furi)から3方向に分かれるみたいなので乗り換えになるのかと思っていたら、終点方面はそのまま乗車という掲示が出ていた。シュバルツゼー(Schwarzsee)を過ぎてもまだ乗り続け、谷底のフルック(Frugg)を通過してトロッケナー・シュテーク(Trockener Steg)でようやく下車となる。現在はシュバルツゼー経由を一つの系統として運転し、フーリとトロッケナー・シュテークを直接結ぶルートは休止している模様。周辺を少し歩いてから次の系統の乗り場に行ったら、今度は大型のゴンドラ2台が交互に往復する形式だったので、暫しホームで待つことになる。

氷河の楽園

既に標高3千メートルを超えているので、窓の外に景色は草木の生えないガレ場か氷河となっている。終点のマッターホルン・グレッシャー・パラダイス(Matterhorn Glacier Paradise)は標高3,800メートルと富士山よりも高い場所で、麓から約1時間で一気に登ってしまったので、意識的にゆっくり歩きながら呼吸を深くする。駅から続くトンネルを抜けると、目の前にはスキー場の銀世界が広がる。トンネルの途中からエレベーターと階段で展望台に上がれるようになっているが、低地では大したことない階段でも、標高3,800メートルではかなりきつい。空は晴れていたので、展望台から東側のモンテローザ方面は良く見えたが、西側から北側にかけては白いガスに遮られている。暫く待っても変わらなさそうだったので、諦めて帰ろうとしたところで急に視界が良くなって、マッターホルンが顔を出す。麓からとは角度が違うので、この辺りではピラミッド型に見える。もっと天気が良ければモンブランまで見えるらしいが、マッターホルンが見えただけでもよしとしよう。トンネル出口付近のエレベーターから下に降りると、氷河を刳り貫いて作った「氷河の宮殿(Glacier Palace)」に出る。氷の彫刻が融けずに残る温度なので、ダウンジャケットを着込んでいたとはいえ、長居はしないよう一通り見て回ってからゴンドラ乗り場に戻る。

ツェルマット

トロッケナー・シュテークで乗り換える際、マッターホルンの頂上がはっきりと確認出来るようになっていたので、駅の屋上の展望台に出て撮影。往復乗車券で途中下車も可能だったので、帰りはシュバルツゼーでゴンドラを一旦降りて周辺を散策。この辺りの標高は約2,600メートル。駅名の由来となった湖は岸辺のチャペルが印象敵だが、湖まで降りてしまうとマッターホルンは見えない。再びゴンドラに乗ってツェルマットに戻る。行きのゴンドラは何度か止まったけど、帰りはスムーズだった。橋の上からマッターホルンを確認すると、雲を背景として全貌が姿を現していた。ツェルマットの中心部を通って宿に戻ったが、急峻な地形がすぐそばに迫っているので不思議な遠近感となっている。

昼は携行食だけだったので、ガイドブックに載っていた店で早めの夕食。仔牛のソーセージと、ジャガイモを使った郷土料理のレシュティ(rösti)。ワインは今朝列車で通過したニヨン(Nyon)のシャルドネ。夕暮れ時に通り雨となり、ベランダから見えていたマッターホルンも雲隠れしたが、夜中に目を覚ますと星空が出ていて、天の川まで確認出来た。