2024/03/15(金)

ローマのコロッセオの近くにネロ帝の「黄金の宮殿」(Domus Aurea)の一部が埋まっていて、ルネサンス期の芸術家達が洞窟(grotta)のような地下遺跡で奇妙な文様を見付け、それを模倣して“グロテスク様式”(grottesca)と呼んだのが、英仏語"grotesque"の由来なのだとか。イタリア語の"grotta"(洞窟)はラテン語の"crypta"(トンネル、地下室)に由来するが、さらに元を辿ると古典ギリシャ語の"κρυπτή"(地下室)になる。英語の"crypt"(聖堂の地下室)はラテン語からの借用。英語ではイタリア語からも借用して"grotto"(小洞窟、人工的な岩屋)という語になっているが、何故か語尾の母音が変わっている。そして古典ギリシャ語の"κρυπτή"は形容詞"κρυπτός"(隠れた)から来ていてるが、後者は"cryptograph"(暗号)や"krypton"(クリプトン(元素))の語源となっている(「クリプトン」はアルゴンの影に隠れて発見が遅れたことに因んで命名されたらしい)。という訳で「グロテスク」と「クリプトン」は語源が同じだったということになる。