2023/01/21(土)

初期のラテン語では、/k/の発音を表す文字はC、K、Qの3つがあって、後続母音によって'CE', 'KA', 'QU'などと書き分ける習慣があったが、後にごく一部の例外を除いて'C'に統一され、ただ/kw/という組み合わせにおいて'QU'という綴りが残った。この書き分け習慣はアルファベットの導入元であるエトルリア語の影響だったことを最近知ったのだけど、実はエトルリア語も初期のギリシャ語の影響を受けていたらしい。フェニキア文字ではKとQに相当する文字は別の発音だったのに、ギリシャ語には/q/の発音がなかったためどちらも/k/となり、後続母音によってKとQを書き分けていた(後にQは使われなくなった)。そしてエトルリア語では/g/の発音がなかったため、Cまでもが/k/を表すようになった、ということらしい。Cはギリシャ文字のγ(ガンマ)に相当する文字だったのに、エトルリア語の影響でラテン語でも/k/を表すようになってしまったため、ラテン語の/g/を表すためにCを変形してGを導入したとのこと。こうして新たに作られたGは、初期ラテン語で使われなくなったZ(ゼータ)の位置に置かれたが、後になってギリシャ語からの借用語のためにYと共にZが再導入され、アルファベットの最後に据えたのだとか。

アルファベットで面白いのは、F、U、V、W、Yの5文字が元をたどれば1つの文字だったということ。フェニキア文字ではYのような形の'waw'という名前の文字で、半母音の/w/を表していた。ギリシャ文字ではこれをY(υ)として母音/u/を表した一方、初期のギリシャ語にあった半母音/w/を表すため、Yの異体字であるFを使用したとこのこと(後に使われなくなる)。このFがエトルリア語では子音/v/を現わすようになり、ギリシャ語にはない/f/を当初FHと表記していたが、初期ラテン語では/v/の音がなかったため、/f/を単純にFと表記したらしい。一方のY(υ)はエトルリア文字を介してVとしてラテン語に入ってきて/u/の音を表したが、古典ギリシャ語のY(υ)は/y/の発音になっていたので、ラテン語では借用語のためにYの文字も後から借用している。そして古典ラテン語では母音/u/だけでなく半母音/w/もVで表していたが、後に半母音/w/は子音/v/に変化し、さらに後からUとVに字形が分かれて、/u/と/v/の発音を文字でも区別するようになったとのこと。一方、英語などのゲルマン語では子音/v/の他に半母音/w/があったため、これを区別するためにVまたはUを重ねたのがWの起源である。こういった経緯で5つの文字に分かれたのだけど、アルファベット順でいうと、Fは今でもフェニキア文字のwaw本来の位置にある。ギリシャ文字で追加されたY(υ)はフェニキア文字最後のtaw(τ)の次に置かれ、これがラテン文字のVとなって、このVから後に派生したUとWはその前後に置かれている。そしてギリシャ語から再導入したYは、Zと共に古典ラテン語のアルファベットの最後に据えられた、といった事情が現在のアルファベット順に反映されているようである。

イタリアワイン

今年最初のボルドーは、Les Hauts du Tertre(Acマルゴー)の2016年。世の中には数多のワインがあるのだし、料理との相性もあるからと、いろいろな種類を飲むようにしているけど、時々ボルドーに戻ってくると、やっぱり一番好きだなと再認識してしまう。