早めに宿を出てモノレールで那覇空港に向かう。1階の端にある第一航空のカウンターで名前を告げ、体重計に乗って搭乗手続きを済ませてから暫し待機。ターミナルビルを出たところで保安検査を受けた後、専用のワゴン車に乗って安全DVDを視聴しながら滑走路反対側の駐機場へ~と何もかもが異例尽くしの搭乗となる。ブリテン・ノーマン製のアイランダーBN2は、乗客定員9名の小型機で、左右3ヶ所の扉からまるで乗用車のように乗り込むため、“機体、特に翼やプロペラには絶対手を触れないように”と他の機種とは違う注意がある。現在国内の定期路線用として就航しているのは、第一航空が琉球エアコミューター(RAC)から引き継いだ2機のみ。以前オリエンタルエアブリッジ(ORC)の長崎-上五島の予約を入れたことがあるが、荒天で自己キャンセルしたため今回が二度目の正直(?)となる。操縦席の斜め後ろに座ったので、離陸時は滑走路が正面に見えてかなり迫力である。沖縄本島を離れ、慶良間諸島の前島近くを経由してから北西に進路を取る。空は雲に覆われ遠くの方は霞んでいるため、見晴らしはそれ程良くない。わずか20分の飛行の後、高度を下げて粟国空港に着陸。
粟国島の北東にある空港から、南側の港がある集落までは徒歩30分。そこまで行けばレンタサイクルもあるようだけど、帰りの飛行機まで6時間以上あるので、のんびりと歩いて回ることにする。島中央部のサトウキビ畑を抜けて、港に立ち寄ってから西を目指す。南海岸は切り立った崖となっているので、途中3ヶ所で海辺に下りる道はかなりの急坂だったが、結局全部下りてしまった。2ヶ所目は「ヤマトゥガー」に続く道で、幅1メートルで高さ10メートル以上もある岩の割れ目を通って、溶岩の波打ち際に出ると、少し奥まったところにポンプ小屋の跡があった。「ガー」は井戸のことだから、表示はないけどこれが「ヤマトゥガー」なのかな。さらに西に進み続け、南西端にあるマハナ展望台にたどり着いたところで昼食休憩。歩いているうちに天気が回復し、汗ばむほどの陽気となったが、海は青く高台から見渡す眺めは最高。
帰りは北側の道を通って、番屋跡経由で大正池公園へ。木製の階段を登り切ったところにある展望台から、島の東側を一望することが出来る。下に降りてから今度は島の北西側を目指す。1km先の海岸近くにある赤瓦の門が、洞寺(てら)の入口である。那覇から流刑になった僧が晩年を過ごしたと言い伝えられる場所で、階段を下りると林の中の鍾乳洞は思ったよりかなり大きい。近付くと人感センサで照明が灯るようになっているが、足下がほとんど見えない場所もあるため、つま先で探りながら階段だらけの通路を進む。他に誰もいない場所で鍾乳石は赤や青に照らし出され、自動的に色を変える場所もあるので何とも言えない雰囲気。一通り見学してから明るい場所に戻ると、まるで別世界のように感じる。
一度北西海岸に出てから南側の港に戻ると、一日一往復のフェリーが停泊していた。この船に乗れば那覇からの日帰りも可能だが、島の滞在時間がわずか2時間となってしまう。港の南東には遊歩道が続き、珊瑚礁の海を間近に見ることが出来る。そのまま島の東側を回る道路に入るが、海からは少し離れていて丘や林に遮られている。途中ビーチへの道があったので、ウーグの浜に出る。この時間は順光となるので海の色は綺麗だけど、午後から下り坂の天気で、次第に風が強まり空の雲も多くなっている。道路に戻ってさらに北に進み続け、漁港を通り過ぎて滑走路の先端を回り込む。島の北西側に外周道路はないので、製塩工場のある北海岸に出るためには、村営牧場を迂回する形になる。工場見学も受け付けているようだが、かなり歩き疲れていたので、近くの海辺まで行ってから空港に戻る。今日は10kmくらい歩いたことになるのかな。
カウンターで再び体重計に乗って搭乗手続き。特に何も言われなかったので運航は予定通りなのだろう。北風が強まって来てるとはいえ滑走路はほぼ南北方向だし、雨もまだ降りそうにないので視界も問題なさそう。搭乗まで時間があったので空港整備に関するパンフレットを読んでみると、以前は定員19名の飛行機が就航していたらしい。その機材が退役となり、他の路線は39人乗りのプロペラ機に置き換わったが、粟国空港は滑走路が800mしかないため逆に小型化してしまったとのこと。という訳で滑走路を延長する計画があるが、そのままの場所では延伸出来ないため、現在どのように滑走路をずらすのが最適か検討しているようである。那覇からの便が到着し、保安検査を済ませてから今度は待合室で安全DVDを視ることになる。帰りも同じ座席だったが、粟国空港の方が滑走路がずっと短いので、離陸時はさらに緊張したりして。行きとはほぼ逆のルートを辿って那覇空港へ。着陸寸前に見える景色が、大型機とは機体の幅の分だけずれているのが面白い。ワゴン車でターミナルに戻り、空港内で食事を済ませてからモノレールで宿に帰る。